放課後、帰ろうとしたら職員室の前で手をつないでいる男女の生徒を見つけた。 「おまえら、少しはわきまえろ。ここは学校だぞ」 「は〜〜〜い・・・」「いこ、ここじゃ見られちゃう」 人の目を本当に気にしてるのか?校内で手をつないで・・・ しかし手をつなぐくらいならまだ可愛い方かな。もっと体を密着させてる生徒もいるし・・・ それにしても最近の子は積極的なんだな。それも男の方が。 俺の時は・・・まともに話し掛けられなかったな。俺だけなのかもしれんが、なかなかできなかったぜ。 ・・・ん?あいつは・・・ 嗣永、か。確か今日は部活は無いはずだったな。 珍しいな、あいつが職員室に張り出された行事のお知らせを見てるとは。 あいつは意外といいかげんだからな・・・でもちゃんと自分で予定を確認してるとは感心だ。 嗣永は気付いていない。もしかしたらあのまま俺に気付かずに帰ってしまうかもしれないな・・・ 1 ほっとくか。あいつといると疲れるからな 2 いつもあいつから話し掛けてくるから、たまには俺からかまってやるか 3 ちり紙をまるめてぶつけてやる 普通に声をかけるのもいいが、それだとちょっと面白味がない。 ポケットを探るといつかもらって使わなかったちり紙が入っていた。そうだ、こいつをまるめて・・・ この距離なら当たるだろうな。嗣永、いつも俺をおどろかしてるからお返ししてやる。 「きゃっ?!」 俺の手から放たれたちり紙の球は綺麗に放射線を描いて嗣永の後頭部に当たった。 「よ、嗣永。珍しいなお前が職員室の張り紙を見てるなんて」 またあのうっとうしい声と動きで俺にからんでくるんだろうな。 「・・・せんせぇ、いるなら普通に声かけてください」 あれ?嗣永にしてはちょっとテンション低いな。普通の人ならこれで丁度いいくらいだが・・・ 「どうしたよ。何かあったのか?」 「いえ、別に何もないですぅ」 やば・・・ちょっと怒らせちまったかな。 別にいつもと変わらないんだがちょっと不機嫌そうに見えるぞ。嗣永・・・どうしたんだ 1 もう一回当てたらいつもの嗣永になるよな 2 なんかあったのか?俺でよければ聞くぞ 3 誰かと喧嘩したのかな 嗣永、何か抱えてるな。これは教師としての勘だ。 「何かあったのか?俺でよければ聞くぞ」 「な〜んにもないですよぉ♪せんせぇに隠し事なんてしないもん、ウフフフフフ」 またいつものうっとうしい嗣永になっちまった。本当に何も悩んでないのか? 「本当に何も悩んでないのか」 「ないです!もぉは悩み事なくてうらやましいってみんなに言われるんですよぉ」 そういやそうだな、嗣永から今まで相談された事はない。他の生徒はみんな悩みを抱えていたが、嗣永はそういうのとは無縁だろうな。 だが・・・なんだか引っ掛かる。気にはなるが本人が悩んでないと言ってるんだから詮索はやめとくか。 「なんか食うか?腹減ってるだろ、もう放課後だからな」 ・・・嗣永の顔が曇ったがすぐに笑顔になった。今のは間違いない、嫌そうな顔をしたぞ。 「無理しないでせんせぇ。給料日前でしょ?」 「お前がそんな事言うのか。明日は槍が降りそうだ」 「失礼だよ!いつも奢ってもらってるから、たまには気を遣ってやめようって言ってるのに」 俺から誘ったらなんだか引き気味になったぞ。悩み事を抱えてるのかと思ったが・・・ もしかして誘われたりするのはちょっと苦手なのか。嗣永 1 じゃあどっかいくか 2 ・・・あれ?そういや前よりちょっと顔が丸くなってる様な・・・ 3 気が乗らないのか。適当に話して帰ろう いつも嗣永に誘われて、いや違うな。強引にどこかに連れてかれてばっかだからな。 だから・・・たまには俺から誘ってみるのもいいよな。嗣永に連れてかれるんじゃなく、連れていくっていうのが。 「じゃあどっかいくか」 「えっ?!いっ、いいです・・・いや、その」 はっきりしない奴だな。嫌がるのかそうしてほしいのかどっちかにしてくれよ。 「たまには俺から誘ってもいいだろ。デートしようぜ」 「あぁ〜〜んいや〜〜、見られたら恥ずかしい〜////」 へぇ・・・お前が恥をというものを知ってたのか、と言おうとしたがやめといた。 「見られるって誰にだよ」 「ほら、えりかちゃんとかあと他の先生とか」 「いつも見せ付けてやるっていう感じだろお前」 「うう〜〜////そ、それはもぉから誘えば・・・誘われたら恥ずかしいもん・・・////」 よく聞こえないな。声まで小さくなってるぞ。いつもの嗣永とはまるで別人みたいだ 1 とくに宛てもなくぶらぶらするか 2 本当にいらないのか?メシくらい奢るぞ 3 デートなら手を繋ごう 嗣永に限らないが、大体は今まで誰かに誘われてばっかりだったからな。 町を歩いていたが嗣永はあまりしゃべってくれず、そしてやけに顔が赤かった。 俺が教師っていう立場だからかもしれないが、自分から誘うのを躊躇っていたのかもしれない。 だから・・・こうして自分からしてみるのもいいよな。誘われるだけじゃだめだ、そう思ったから・・・ 「きゃっ?!」 「なに変な声出してんだよ。もう学校は出たからいいだろ」 「触るならそう言ってくださいよぉ////」 小さい嗣永の手。俺より一回りは小さいな。 いつも自分から繋いでくるくせに何をそんなに照れてるんだよ。 「もぉ・・・なんでにやにやしてるんですかぁ」 「してないよ。嗣永こそさっきからおとなしいな。せっかくのデートなんだぜ」 「で、デートとか言わないでってばぁ////」 いつもなら俺の手を振り回したりやたら飛び跳ねたり、あれ買ってこれ食べたいだのやりたい放題なのに。 なんか・・・嗣永には悪いかもしれないけど、普段より女の子らしく見えるぜ。 1 腹減ったな、なんか食おうぜ 2 はぁ疲れたな、公園のベンチで一休みしよう 3 犬の散歩してる人が通り掛かった。うわ、いきなり吠えてきたぞ なんだかこうやっておとなしい嗣永も・・・可愛いな。 嗣永は元気な方が好きだけど、でもこうやってちょっと照れを隠せないのもなかなか・・・ 前から犬を連れて散歩してる主婦が歩いてきた。この時間だとたまにいるよな 「わん!わんわん、わん!!わん!!」 服を着せられた、ちょっと不細工なのがかわいいボストンテリア。いきなり吠えてきたな 確かこの犬は猟犬だから気性が荒いんだったっけ。それにしてもちょっとうるさいな 「・・・・・・・・・」 「つ、嗣永、どうしたんだよ俺に隠れて」 嗣永は隠れる様に俺の背中にひっき、涙目でふるふる首をふりながら見上げてくる。 「も、もも、もぉ、犬が苦手なんですぅっ」 なんだ、そうだったのか。へぇ・・・初めて知ったぞ。 俺、そんな事も知らなかったのか。考えてみたら嗣永のことまだよく知らない・・・よな? 主婦は嗣永を見て笑いながら歩いていった。まだあの犬吠えてる、容赦ねぇな。 「もう大丈夫だぞ」 「こ、怖くなかったですけどね〜。もうぜ〜〜んぜん」 強がってるところがなんだか可笑しかったが笑わないでおこう。わ、笑わないで・・・ 「なんで笑ってるんですかぁ!せんせぇのばぁかっ!」 ちょっと疲れたので近くにあった公園で休むことにした。ベンチに腰掛けたら隣に嗣永が座って・・・ 「犬、苦手なのか。知らなかったぞ」 「うん・・・嫌いじゃないけど苦手・・・って何を言わせるんですかぁ?!苦手じゃないって言ってるでしょ!」 「苦手ってさっき言ってなかったか。べつに苦手なものがあるのは恥ずかしくないぞ」 「うう〜〜、じゃ、じゃあせんせぇはなんか苦手なものってあるんですか?」 1 「あるよ、ものすごく苦手なもの」と嗣永を指差す 2 実は・・・俺も犬は苦手だ、さっきはちょっと怖かったんだよな 3 「俺は完璧超人だからな。苦手なものなんか鍵穴くらいだぜ」と冗談を言う 「あるよ、苦手なもの。それは・・・犬だ。実は俺も犬が苦手なんだ」 「ええ?だ、だってさっきは平気だったじゃないですか」 「・・・ああ。小さな犬だったからな。大型犬が苦手なだけで他は平気だ」 「なぁんだぁ。もぉはちっちゃいのも苦手ですぅ」 嗣永・・・悪い。本当は嘘なんだ。小さい犬も苦手だ。 嫌いじゃないんだが小さい頃に噛まれて以来、犬と接する時はどうしても構えてしまう。 嗣永がいる前だから変な姿は見せられない、そう思ったらなぜか平気だった。 びびったら嗣永に馬鹿にされそうなのもあったが、弱気な姿は見せたくなかった。 「せんせぇにも苦手なものがあったんですね、ちゃんとした人間だったんだ」 「お前な・・・俺だって人間なんだぞ」 「えぇ?しゃべるゴリラでしょ、ウフフフフフ」 こいつ、言ってくれるな。いい笑顔しやがってまったく。 やっぱり・・・嗣永の笑顔は見てるといい気持ちになれるな。 1 ル*’ー’リ<せんせぇ、キスしない?ウフフフフフ 2 はっ、犬が近づいてきた!まずいぞ 3 もっと嗣永の事を知りたい、何か話そう もっと嗣永のことが知りたい。俺まだ、何も知らないから。 「誰がゴリラだって。まあ、当たってるけどよ」 「自分で認めてるじゃん。体おっきくてゴリラみたい、ねえウホウホって胸叩いて!」 「お前調子に乗るなよ。今学期の成績覚悟しとけ」 「ずるいそういうのぉ。しょっけんらんようです!」 そんな難しい言葉を知ってるのか。嗣永は意外と博識だな。 俺は・・・嗣永の好きな色を知ってるか?好きな映画とか、嫌いなものとか、とにかく知らないものが多すぎる。 なんにも知らないうちに俺は嗣永と一線を越えてしまったのか。すごく大事な事なのに。 「お前だってやけに筋肉質だろ。雌のゴリラだな」 「なにむきになってるのせんせぇ、ウフフフフフかわいいんだから」 「気にしてるんだな。ちょっと声が低くなったぞ」 「・・・そうですよ。実は・・・筋肉じゃないけど、最近気にしてる事があるんです」 そういえば、さっき学校で話した時に何か悩んでるみたいだったな。今なら話してくれるのか 1 体の事で悩んでるのか・・・って、ま、まさか 2 筋肉じゃなくて脂肪で悩んでるのか? 3 違う話をしようかな。悩みはおいとこう ま・・・まさか・・・体の悩みっていうのは・・・?! 「わかった、聞くよ。体について悩んでるんだな」 「はい。あのぉ・・・前より体が重い感じがして・・・」 そうだ・・・避妊しないで嗣永としてしまった。そ、そういう変化の後は体調が悪くなるから・・・! 俺はまさか、だ、大事な生徒を・・・あわわわわ、あわわわわわわわ・・・ 「そ、それでもぉ、病院にいったんです」 これ以上聞いたら俺はおかしくなりそうだったが、逃げてはいけない。 「そ・・・そしたら・・・お医者さんが・・・!」 その先の言葉を聞いたら俺は冷静ではいられないだろうな。だが・・・嗣永をそんなふうにしたのは俺だ。 そして嗣永は続きの言葉を言った。その言葉は 1 「やや太り気味だね、って。ひどいですよね?!」 2 だめだ、やっぱり聞けない 3 嗣永が両手で顔を覆ってしまった。大丈夫か?! 言った、と思ったが嗣永は顔を両手で覆ってしまった。 「嗣永、どうしたんだよ」 「・・・・・・・・・・・・」 ・・・言えないのか?言おうとしたが言えなくなったのか? 「おい嗣永、大丈夫か」 「・・・・・・・・・・・・・・・!」 顔をふるふると左右に振っている。つらいのか、嗣永。 もしかして思い詰めてるのか。しゃべれなくなってしまったほど。先生として生徒を助けられないなんて、こんな情けない事はないぞ。 くそっ、何とかしてやりたい。俺は何もしてやれないのかよ。目の前で苦しんでる生徒がいるっていうのに! いつも笑顔の嗣永が思い詰めて言葉を失ってしまうなんて 俺はどうしたらいいんだ。 1 急に嗣永が「お医者さんが太りすぎって言ったの!」と泣き付いてきた 2 ・・・言えないなら無理に言うな、と抱き締める 3 やばい、何も言えねぇ 「お医者さんがね、もぉにひどい事言ったの!!」 急に嗣永が泣き付いてきた。俺の胸に顔を押しつけて・・・ 「も、もぉがね、太りすぎだって。もう信じらんない!」 ・・・・・・あ?いま、なんて言ったんだお前。ん? 「ちょっと脂肪がつきすぎだって。失礼ですよね?!」 「・・・あ、ああ、そうだな」 「せんせぇの方がよっぽど脂肪つきすぎですよね!!ねぇ!もぉは痩せてますから!」 「俺と比べるなよ・・・」 なんだ・・・そんな事かよ。まったくヒヤヒヤしたぜ実際。 てっきり孕ませてしまったかと思った。太っただけなら大丈夫だよな。 「だからさっき何か食おうぜって言ったら嫌がったのか」 「はい。もぉ、昔から太りやすかったんです」 1 牛丼でも食うか、それともラーメンがいい?メガマックでもいいよ 2 じゃあ今から走れ。俺がいいと言うまで続けろ 3 仕方ねえな、もうちょっと抱いててやるよ・・・//// 「そうか、いくら仕事とはいえその医者ももう少し優しい言い方してほしいよな」 「そうですよぉ!だから慰めてください・・・せんせぇ」 嗣永、かわいそうだな。気にしてる事を指摘されて傷つかない人間なんていないよ。 だから・・・慰めてやりたい。嗣永、今からいいところにいこう。な? 「慰めてやるよ嗣永。ほら、近くに牛丼屋があるぞ」 「・・・・・・・・・・・・」 「あ、牛丼は嫌か。だったらラーメンにするか。餃子もつけてな、そうしようぜ」 「・・・・・・・・・・・・」 「そうか、そんなじゃ足りないか。だったらメガマック」 嗣永は立ち上がり、思い切り俺の足を踏ん付けてきた。 「うぁああああ?!おま、そ、そこは人間の急所なんだぞ。踏むな、ああああぁあ」 「せんせぇのばぁか、ばぁか、デブ!ゴリラ!スケベゴリラ!」 はっはっはっ、はっはっはっ、まったく嗣永ってば容赦ないよなぁ。涙出てきたぜ 「じゃあねせんせぇ、しばらくそこで反省してれば!」 「あははは、そうだな。じゃあな嗣永」 足は痛かったが俺は気持ちがよかった。 嗣永も・・・気持ちよさそうだったな。あの声はいつもの嗣永だった。 ・・・声は嘘をつかない。気持ちは必ず声に出る。 嗣永・・・俺、もっとお前と一緒にいたいよ。
ル*’ー’リ<せんせぇのゴリラぁ (*教師)<嗣永のデブ