とある日曜日、俺はいつもの休日より早く起きて準備をしていた。
萩原、舞ちゃんのお誕生日祝いを兼ねたデートのためだ。
「あのね、先生。今度の日曜日ヒマ・・かな?良かったら舞と一緒にデートしてほしいんだ♪」

あの日以来俺と舞ちゃんの仲が急に親しくなったような気がした。
舞ちゃんは毎日のように職員室に来て親しげに話してくるようになった。
おかげで安倍先生や村田先生からは弄られからかわれ放題だけど・・・
それに一番の変化は・・・

「先生、ちょっと切ってみたんだけど似合うかな?」
舞ちゃんはそれまで伸ばしていた髪を切り、制服も長めのスカートから短くなり・・
「あ、ああ。舞ちゃんにすごく似合ってるよ。」
こんな風におしゃれにまで気を遣うようになっていた。
そんな舞ちゃんにふと”女”を意識するようになり・・・っていかんいかん、舞ちゃんはまだ13歳じゃないか。

そんな舞ちゃんからデートの誘いを受けた。そういえば舞ちゃんと二人で会うのって学校以外ではこれが初めてなんだな。
そんなことを考えているうちに待ち合わせの時間が近づいてきた。
舞ちゃんが家にやって来るのだが・・・

「ピンポ〜ン♪」
玄関のチャイムが鳴りドアを開けると・・・

1 やあ舞ちゃん。まだ時間前だけど
2 あれ・・・?矢島?どうしたんだ?
3 舞ちゃんに矢島?ふたりともどうしたんだ? 



「舞ちゃんおはよう。あれ?矢島・・・?どうしたんだ?」
「お、おはようございますっ!あ、あの・・ちょっと先生に用があって。それで・・・偶然舞ちゃんと会って・・・」
「おはよう先生♪先生のお家にまさか矢島先輩が来てるなんてびっくりしちゃった。一緒に来ちゃった♪」
「えっと・・二人は初対面じゃないのか?」
「矢島先輩とは入学した時にいろいろとお世話になったんです。舞にとっては憧れの先輩なんです♪」
「そんな・・・恥ずかしいよぉ・・・」
「それで矢島、用ってのは?」
「いえ、大したことじゃないんで。それに私お邪魔みたいだし・・・」

照れ笑いながら答える矢島。一瞬矢島の表情が曇ったような・・・

1 舞ちゃんちょっと待ってもらっていいかな?
2 矢島、もし良ければ3人でどこか出かけようか?
3 ごめんな矢島。また後でじっくり話を聞くから 



「ごめん舞ちゃんちょっと待ってくれるかな。」
「うん、いいよ。」
「悪いね舞ちゃん。中に入って暖まってて。」

俺は舞ちゃんを家の中に入れて矢島の話を聞いた。

「あの・・・実は喧嘩しちゃったの。お兄ちゃんと・・・」
「なんだって?」
「昨日は私の誕生日だったんだけど、お祝いパーティーの時にちょっと言い合いになって・・・」
「また兄貴が過保護すぎるってことなのか・・・」
「そうなの。いきなり手紙を持ってきて・・・」
『なんでこんなものを持ってるんだ。余計な虫はお兄ちゃんが駆除してやる。』
「って、手紙を破り捨てたの・・・私がもらったファンレターなのに・・・」
「それは酷過ぎるな・・・いくら妹を思うからってそこまではやりすぎだ。」
「しかもお兄ちゃん、私の部屋に入ってその手紙を探したんですよ。もう気持ち悪くなって・・・」
「矢島・・・」
「気がついたらお兄ちゃんを殴り倒して・・・ここに・・・私、私はどうすれば・・・」

矢島の肩が震え、涙が零れ落ちていた。いつもは大きく見える矢島が小さく見えていた。

1 矢島をほっとけない。舞ちゃん、デートはまた今度にしよう
2 これから一緒に兄貴のところに話をつけにいこう
3 よし。今日一日はいやなことを忘れて3人で一緒に遊ぼう 



こんな矢島を放っておけない。俺は矢島の肩を両手に置いて
「よし!こんな時はすべて忘れて楽しく遊ぼう!」
「先生・・・」
「せっかくの誕生日祝いだ。涙なんか似合わないぞ。舞ちゃんも同じ誕生日だから3人で一緒に。」
「ありがとう・・・先生。でも、舞ちゃんはいいの?」
「私は大丈夫だよ。それに私と矢島先輩がおんなじ誕生日でなんか嬉しいもん♪」

気がつくと舞ちゃんが玄関を開けて現れた。
「舞ちゃん、ごめんね。」
「ううん、優しい先生らしくていいと思うよ。先生がああ言わなかったなら私投げ飛ばしてたところだもん。」
「あはは・・・それはちょっと勘弁してほしいな・・・」
「冗談ですよー。でも、そんなやさしい先生舞大好きだよっ♪」

そういうと舞ちゃんは自分の腕を俺の腕に絡み付けた。
「なんか舞ちゃんと先生ってとっても仲のいい兄妹みたいですね♪」
矢島はそんな俺たちのやり取りを見てくすっと微笑んだ。今日はじめての矢島の笑顔。
「矢島先輩は笑顔のほうが素敵ですよ♪舞は真剣な表情も好きだけど〜」
「こら〜っ!舞ちゃん!先輩をからかわないでよっ!・・・ありがとう。」

さあ3人のデート。どこへ行こうかな?

1 まったりと映画館
2 遊園地でおもいっきりはしゃごう
3 水族館もたまにはいいかな 



「よし、それじゃあさっそく出かけるか。舞ちゃんと矢島はどこか行きたいところとかある?」
「舞遊園地に行ってみたい!」「私も舞ちゃんと同じかな」
「遊園地か。ここからだと車で1時間ぐらいか。それじゃあ出発だ」
「は〜い♪」
俺たちは車に乗って遊園地を目指した。

「舞ちゃんすごいね。空手5段に柔道3段なんて。それに合気道もやってるなんて。」
「そんなことないですよ〜。今度護身用にいろんな技先輩に教えますから〜♪」
車の後部座席で会話を弾ませる二人。
まるで双子の姉妹のように仲睦まじく話す二人をミラー越しに見て俺はほっとため息をついた。
今はこうして明るく話してる二人も支えきれないほどの悩みを持って耐えているんだな。
俺がその悩みを少しでも軽くしてあげないとな・・・
「・・・ちゃん。お兄ちゃん♪」
「お兄ちゃん。何ボーっとしてるんですか?運転中危ないですよー」
「ああ、すまん。で、お兄ちゃんって?」
「今日一日は私たちは先生のことをお兄ちゃんって呼ぶことに決めたんです。」
「それでせ、お兄ちゃんは舞と先輩のことを名前で呼ぶの。」
「えっ?ちょっと・・・いつ決めたんだ?」
「だから今さっきだよ。お兄ちゃんさっきから上の空だったから」
「それは勘弁してくれよ・・・舞ちゃん。」
「ぶーっ!呼び捨てで舞って言わなきゃだめだよ〜。あとでおごってよぉ〜♪」
「ははは・・・参ったな舞ち、舞には。」
「えっへぇ〜ん♪」

そんな他愛も無い会話で盛り上がりあっという間に車は遊園地へ着いた。

「うわぁ〜綺麗・・・遊園地に来たのっていつ以来だろう・・・」
「お兄ちゃ〜んおなかすいたぁ〜♪」

1 まずは腹ごしらえ
2 パレードが始まるみたいだな。見に行こうか
3 お兄ちゃん、お買い物行こう♪ 



「しょうがないな。それじゃあちょっと早いけどお昼にするか。今日はせ・・お兄ちゃんのおごりだからな。」
「やったぁ〜♪舞はカルボナーラとホットミルク♪」
「私もカルボナーラとカフェオレでお願いします。」

俺は食事を買いに売店へと向かった。

「ねえねえ、舞美お姉ちゃん。お姉ちゃんはお兄ちゃんのこと好きなの?」
「えっ!?そ、そんな急に・・・何冗談言ってるのよ舞ちゃん・・・・」
「ごまかしてもダメだよ。舞には何でもお見通しなんだから。せ、お兄ちゃんを見てる目が恋してる目だもん。」
「舞ちゃん・・・・」
「よ〜く分かるんだ。だって、舞もお兄ちゃんのこと大好きだから。」
「・・・」
「実は結婚の約束もしてるんだ。舞がもっと小さい時の話だけど・・・」
「舞ちゃんには参ったなぁ・・・でも良く分からないの。すごく気になるんだけど、それは好きなのか興味があるのか・・・」
「そっかぁ。でも、もしお姉ちゃんがお兄ちゃんを好きになってもそれはそれでいいかなって。お似合いだもん」
「舞ちゃん・・・・」
「もちろん私も負けるつもりはありませんからねっ♪」

「おーいお待たせ〜♪」
「おにいちゃ〜んおそいよぉ〜♪」

「負けるつもりはありませんよ・・・か。4つ下の妹にライバル宣言されちゃった。でも私も負けないよ・・・」
「お姉ちゃ〜ん。早くしないと冷めちゃうよ〜」
「は〜い。今行くから〜♪」

三人で仲良く昼食をとった俺たちはこの遊園地名物のパレードを見に行った。
実はさっき食事を頼んだ時に二人に内緒でサプライズプレゼントを準備してたんだよな・・・

「うわぁ〜あのウサギちゃんかわいいぃ〜♪」
「本当だね〜花火も上がってるよ〜♪」
パレードに釘付けの二人。俺のことなどすっかり忘れてパレードに夢中になってるよ。
でもこの後、この二人がパレードの主役になるなんて思いもよらないんだろうな♪

「ウェルカムトゥキューティーランド!トゥディズスッペシャルゲストカモン!」
パレードの司会者が二人を指差して観客に拍手を促す。

「えっ?舞ちゃん、もしかしてこっち指差してた?」
「お姉ちゃん?まさか、私たち?」

「オーイエス!キューティーシスターズハッピーバースデー!カモン!」

<Mai&Maimi's SIDE>
お兄ちゃんの方を見るとお兄ちゃんはにこっと微笑んでステージを指差しウインクをした。
まったく・・・なんてキザな演出するんだろう。でもそんなやさしいお兄ちゃん大好きだよ・・・

パレードカーの上に乗った私たちはたくさんの拍手と大きいぬいぐるみをもらった。
一日遅れだけどとっても忘れられない最高の誕生日になった。

「お姉ちゃん、泣いてるの?せっかくの美人が台無しだよ・・・」
「そう言う舞ちゃんも・・・目から涙がこぼれてるよ・・・・」

それから俺たちは遊園地で日が暮れるまで思いっきり遊びまくった。
普段は強そうに見える舞美と舞がおばけ屋敷であんなに驚くとは・・・
屋敷内で磁石のようにぴったりとくっついていたな。
帰りの車中、遊び疲れた舞は天使のような寝顔でぐっすりと熟睡していた。

「ねえ先生。」
「どうした矢島。やっぱり帰りたくないのか?」
「ううん、私家に帰ろうと思うの。やっぱりこのままじゃいけないから。」
「そうか・・・そう言うと思ったよ。おせっかいだと思ったけど、兄貴にメールしておいたぞ」
「先生・・・・」
「妹を大事にするのはいいが、自己満足を押し付けるのはいいかげんにしろ。ってな」
「さすがの兄貴もちょっと凹んでたみたいだけど、すっかり反省してるようだ。」
「ありがとうございます・・・・」
「うにゃ・・・・お兄ちゃん?もぉついたぁ?」

車は家の近くまでのところに来ていた。

「それじゃあ私たちはこの辺で。」
「本当にここで大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。いざとなったら舞ちゃんがぽいって投げちゃうから♪」
「そうか。それじゃあおやすみ。」
「先生、ちょっと待って。目をつぶって5秒数えてください。」

俺は矢島に言われたとおり目を閉じて5つ数えた。

「お兄ちゃん大好きっ♪ちゅ♪」
両頬に柔らかい感触・・・目を開けると右に矢島が左に舞ちゃんがいて俺の頬に口付けを・・・

「それじゃあおやすみ♪おにいちゃん♪」
二人は照れを隠すようにダッシュで走り去っていった。
「矢島・・舞ちゃん・・・こちらこそありがとう・・・」