「本堂のお掃除おしまいっと♪さてと、次はお墓の掃除いってきまーす♪」
「すまんのう・・・わしが風邪を引いたばっかりに。せっかくの週末、お友達と遊びに行きたかっただろうに・・・」
「水臭いよおじいちゃん。おじいちゃんにはいつもお世話になってるんだから。それにあんまり友達と騒ぐのって苦手なんだ。」
「そうか・・・申し訳ないな。外は寒いから風邪をひくんじゃないぞ。」
「おじいちゃんこそ早く風邪を治してね。今年の風邪は今年のうちにね♪それじゃあお掃除行ってきまーす♪」

私の実家はお寺、現在の住職であるおじいちゃんで5代目の由緒あるお寺なの。
ただ次を継ぐ者がいないの。後を継ぐはずであった私の両親が事故で7年前に他界。
おじいちゃんは「これも運命じゃ。わしが亡くなったら寺もおしまいじゃ」って言ってるけど・・・
なんとかおじいちゃんの役に立ちたいけど私一人ではどうにも出来ないし・・・

そんなことを考えながら私はお墓の前にやってきた。さすがにこの時期に来る人はまったくいないけど、たった一つだけこの時期に綺麗に磨かれた墓が一つだけあって花も手向けられてある。
「こんな時期に・・・誰なんだろう。あっ、あの人は・・・」

(Teacher's Side)
「   元気だったか?お前のおかげでこうして元気で暮らせているよ。だけど最近悩みがあるんだ・・・」
俺はあいつの墓の前で今年一年の出来事を話している。
本当にいろんな生徒と出会い、女生徒と肉体の交わりも持ってしまった。
お前という女性がいながら贅沢だよな。罰当たりだよな。いや、むしろお前から罰を受けたくてここに来てるのかも知れない。
俺は深く目を閉じて墓の中で眠っている”あいつ”にそっと祈った。

目を開けると見慣れた生徒が
「あ、君は・・・・」

(女生徒の中から一人選択してください。ただし、桃子・梨沙子を除く) 



「き、君は鈴木・・・どうしてこんなところにいるんだ?」
「ここは私の実家なんですよ。実家といってもおじいちゃんが住職をやってるんですけどね。」

俺の目の前にいるのは鈴木・・・思わず保健室での有原との”絡み合い”を思い出してしまい、体中の血が沸騰するかのようにカッと熱くなった。
「先生はどうしてここへ?どなたかお知り合いのお墓参りですか?」
「ああ、まあそんなところかな・・・」

(Airi's Side)
先生が答えた瞬間、先生の顔が一瞬寂しそうに見えた。
初めて見た寂しそうな先生の顔。まるでこの冬のように寒く凍てついた表情・・・
こんな表情をするなんて、先生にとってよっぽど大切な人なのかな?
先生のことがもっと知りたい。でも何か知ってはいけない・・・私の中で好奇心と自制心がせめぎあっている。

1 墓参りをするなんて先生にとって大切な人なんですね
2 もしかして・・・先生の恋人なんですか?
3 やめよう。先生にだって人に知られたくない秘密があるんだ 



「こんな時期にわざわざ墓参りをするなんて、先生にとって大切な人なんですね♪」
私はわざとおどけながら先生に尋ねた。
しばしの沈黙・・・やっぱり聞かなければ良かった。私の心臓が張り裂けそうに痛んだ。
「・・・俺の・・・好きだった女性がここに眠っているんだ。」

私の嫌な予感は当たってしまった。7年前の私と同じだ。
一番大切な人を亡くしてしまった悲しみに覆われた寒々とした瞳。
先生も私のようにすごく悲しく切ない思いをしてたんだ・・・・

(Teacher's Side)
今まで誰にも言ったことがない秘密をついに言ってしまった・・・
何でだろう、鈴木の前では嘘が言えないからなのか。
それとも俺と同じように何か大切なものを失った寂しい瞳をしてたからだろうか・・・

「ご、ごめんなさいっ!私ったら失礼なこと聞いて・・・」
自分の不用意な発言が申し訳なくて私は涙声になっていた。
「いいんだよ。なんか鈴木になら話してもいいかなってさ。」

はっとしてしまった。すぐ泣くところ、そして真っ直ぐで透き通った曇りのない瞳。”あいつ”とおんなじだ。
いや、まるで”あいつ”が目の前にいるみたいだ・・・・
鈴木にならこの俺の苦しみを話しても・・・いや、14歳の少女に俺の悲しい過去を聞かせるのは酷なのかもしれない
なあ   、これが俺に対する罰なのか?

「鈴木・・・もし良かったら俺の独り言を聞いてくれないか?」

1 先生のことなら何でも知りたい
2 代わりに私の話も聞いてくださいね
3 先生、辛いことを無理して話さなくてもいいんですよ 



「分かりました。その代わり私の話も聞いてくださいね。」
「ああ、分かった。ちょっと重い話かもしれないけど・・・」

そして俺は”あいつ”との出会い、そして別れ、それから今に至るまでを鈴木に話した。

〜12年前〜
俺は当時高校3年生、成績はそれほど・・・下から数えて早いほうだった。
そして暇さえあれば喧嘩に明け暮れる毎日。いわゆる”不良”だった。
学校の教師たちも早く俺がいなくなってくれるのを静かに待っていた。
そんな俺に誰も近寄るやつなど一人もいなかった・・・・
ある女性を除いて・・・

「こらっ!   くん。遅刻しないの!ちゃんとしないと卒業できないぞ!」
「うっせーな・・・別に遅刻したって卒業できるし。それに先公たちは俺が退学になったらせいせいするみたいだしな」
「ばかっ!そんな自分を卑下しないのっ!   くんには   くんらしいいいところがたくさんあるんだから!」

何かというと俺に絡んでくるこの女、俺と同じクラスで生徒会長まで勤める才女。
しかもルックスが良くて全校の人気者で、俺とは不釣合いな女性だった。
最初のうちは”こいつ”がうざく感じたが、慣れというものはおそろしく、気がつけばいつも側に”彼女”がいた。
そしていつしか”彼女”に親しみ以上の感情を抱くようになっていた。

「ねえ、  くんの夢って何?」
「えーっ、そんなのまだ考えたことねえよ。それに夢なんて叶わないもんだし。」
「まったくぅー・・・   くんってロマンのかけらもないんだからぁ。」
「じゃあお前の夢は何なんだよ?俺に偉そうなこと言ってるから、よっぽどすげぇ夢なんだろうな。」
「ふふっ♪聞きたい?じゃあ   くんにだけ特別に教えてあげるっ♪」

”彼女”は公園のベンチから立ち上がり、俺を真っ直ぐな瞳で見つめて答えた。
「私ね教師になりたいんだ。悩んでる子を助けられる強い先生に。」
彼女の純粋で俺を射抜くような瞳に俺の心が打ち抜かれた。

「お前なぁ、それじゃあ夢って言わないよ。」
「えーっ、なんでよぉー。私の夢にケチつけるわけぇー・・・」
「違うよ。お前なら必ず叶えられるからだよ。」
「本当?私に・・・できるかなぁ?」
「出来るとも。この俺が保証するよ。それともおれのお墨付きだけじゃ不安か?」
「ううん・・・    くんがそう言ってくれるならきっとなれると思う。」
「なれるよ!この俺が命を懸けても約束する。」
「それじゃあ・・・・誓わせてね・・・」

彼女はそう言うと俺の唇にそっと自分の唇を重ね合わせた。
なんでもないような幸せな時間。しかし、この時俺は彼女のSOSを受け取ることが出来なかった・・・

12月の粉雪が降るある日の朝、俺と彼女の時間は止まってしまった。
彼女が急逝した。
彼女の故郷のある山の麓の雪原で彼女は眠るように逝ってしまった。睡眠薬による自殺だったらしい。
俺は彼女の亡骸の前で涙が枯れ果てるまで泣き続け、それからの俺は魂の抜けた人形のようにただ生き永らえてるだけだった。
そんな俺を見かねてか、彼女の両親が俺に手紙を渡した。

「これはあの子からあなたへの手紙だそうです。49日の法要のあとに部屋を整理していたらこの手紙を見つけたんです。」

俺は彼女の手紙を開けてみた・・・・

〜   くんへ〜
突然いなくなってゴメンね。私はすごく弱い人間です。
あなたにいつも偉そうなこと言ってばかりなのに、実は一番弱いダメな人間です。
あなたに「お前の夢は必ず叶えられる」ってお墨付きもらったのに、約束を守れなくてごめんなさい。
    くんは夢がないって言ってたけど、もし良ければ私のささやかな夢を代わりに叶えて欲しいな。
優しい   くんならきっと出来るはず。ううん、絶対できる!
あなたのことをずーっと側で見ていた私が保証するんだから絶対できるよ。
本当にありがとう。短い間だったけど楽しかったよ。
遠い空の上から    くんの姿をずっと見守ってるから。
それじゃあいつかまたどこかで会おうね♪大好きな   くんへ・・・

「それから俺は死に物狂いで勉強をして2年浪人の末に教育大に入学して教員免許を取り、彼女の故郷であるこの街の学校に赴任してきたんだ。」
「先生・・・・」
「今までがむしゃらに頑張ってきたけど、時々疑問に思うんだ。俺は彼女の言うような立派な教師になれたんだろうか?時々不安になってくるんだ・・・」
「・・・先生。先生はその彼女さんの夢を叶えてると思います!かんなちゃんも言ってました。先生のおかげで家族と向き合うことが出来たって・・・」
「鈴木・・・・ありがとう。でもそれは結果論であって、本当に生徒のことを真剣に思って守ってあげられるのかって・・・」
「先生・・・」

1 彼女さんも天国で先生の頑張りを見てると思います。自信を持ってください
2 先生!私が保証します 



「先生!私が保証します!先生は弱い生徒の立場になって一緒に悩んで乗り越えてくれる素敵な先生だってことを・・・」
「鈴木・・・」
「私は彼女さんのように先生と一緒にいる時間はそんな長くないですけど、先生を見た瞬間に優しい人だって分かるんです。だから・・・だから自信を持ってください!」

鈴木がそう言うと俺の唇に自分の唇を重ね合わせた。
俺の凍てついた心を溶かすような温かく柔らかい鈴木の口づけ・・・

「指きりげんまんの代わりです♪今度弱音を吐いたら針千本飲ませますからね。ケケケケ・・・♪」
「鈴木・・・ありがとう・・・・なんかすごく元気になってきたよ。そうだ、鈴木の話も聞かせてくれないか?」
「あっ、私の話は・・・取るに足らない話なんで・・・それじゃあ掃除が残ってるのでこの辺で。先生さようなら♪」

鈴木は軽やかな足取りで去っていった。
俺は粉雪の舞い降る空を見上げてみた。
「    、まだまだ未熟な俺だけどなんとか頑張ってるよ。お前の分までこれからも頑張っていくからずっと見ててくれよ。」
「それにしても・・・・鈴木って    そっくりだったよ。もしかして悩んでる俺にハッパをかけるために彼女に乗り移ってエールを送ってくれたのか?ありがとう    。」