うー寒い。まだ真冬にもなってないのに・・・冬の入り口でこんな寒いのかよ
登校してくる生徒もマフラーを巻いたり、スカートの下にジャージを着たりしている。
着くずしてしまうのはよくないがこんなに寒くちゃ仕方ないな。寒さには勝てない

「?!」

ひゅん、と風を感じた。何かと思ったら凄い速さで俺を追い抜いていった人影。そして

¨どかっ、どどどどどど¨

派手に近くのコンビニのごみ箱にぶつかり、衝撃でごみ箱が開いてしまい中身が散乱してしまった
あまりに突然の出来事だったので少しの間立ち尽くしてしまったが、このままでいいのだろうか

1 ごみに埋もれた誰かを救助せねば
2 見ないふり・・・・・・
3 あら?もう一人俺を追い抜いていったぞ、あれは矢島じゃないか 



どうしようかと立ち尽くしていたら、また誰かが俺を追い抜いていった。
そしてたった今誰かが激突し、中身が山になったごみ箱の方へと・・・
あれは矢島じゃないか。なんであんなところに?

「大丈夫?!しっかりして!」
下敷きになってるのが誰かわからないがあれは矢島の知り合いなんだろうか。
とにかく助けよう、迷っている場合じゃなかったんだ。
「あっ先生!どうしてこんなところに?」
「毎朝通る道なんだよ。それよりこのごみの中にいる人は知り合いなのか?」
それを聞いたら矢島は顔を真っ赤にした。なんでこんな反応をするんだろう。
「せ、先生、ここは私一人でできますから早く学校に行ってください」
「なんでだよ。困ってる生徒を見捨てるわけにはいかないだろ」
「いいから行ってください!早くっ!」
すごい剣幕だな・・・・・・なんで俺が手伝っちゃまずいんだ

1 まさかごみ箱に突っ込んだのはお前の彼氏じゃ・・・
2 わかったよ、お前が言うならそうする
3 わっごみが吹っ飛んだ?!いきなりなんだよ 



この慌て様から察するとその人物は・・・間違いない。
「そうか、俺に見られたらまずいのか」
「はい!嫌です!」
「・・・彼氏なのか」
「・・・・・・そ、そうです、それでいいですから早く学校に行きなさい!」
それでいいとはどういう意味なんだろう?おいおい、勘違いされていいのか矢島。

「う〜〜〜、舞美か?舞美、そこにいるのか?」
名前で呼んだ。これは男の声だ、まちがいない。やはり彼氏みたいだな
「先生早くどっか行って!は、はやく!!」
俺が見ちゃいけないのか。って事は俺の知り合いなのか?!そそそんなの・・・

「舞美ぃぃぃぃぃ!!」
「うわあああ?!」
ご、ごみが吹っ飛んだ。まるでマンガみたいに・・・!
「・・・・・・」

中から出てきたのは・・・あれ?なんかこの男、よく見たら矢島に似てる様な。
「舞美、なんだその男は。どうしてそこにいる」
「ずっと追い掛けてたんだよ、声もかけたのに気付かなかったの・・・?」
「知らん。てっきりもう学校に行っちまったかと思ってすっとんでったんだぞ」

矢島が髪を短くして声が低くなったらこうなりそうだな。顔が似ているからこの男はおそらく

1 たぶん兄貴だな
2 あるいは弟かも、姉さんを呼び捨てにする生意気な奴だな
3 なんかここにいちゃまずい気がする 



以前矢島から兄貴がいると聞いたことがある。ならこの男は兄貴にちがいない。
「先生だよ、私話したことあるでしょ?」
「・・・知らん。そんなことあったか?」
「ちょ!お兄ちゃんなんでそう忘れっぽいわけ?!大事なことだよ!」
「そんな事知らん!だが、お前がその男と一緒にいたのは事実だ、それを見逃すわけにはいかないな」

い、いやな空気だな。俺はここにいない方がいいかもしれない。
矢島が早く学校に行けと言ったのはこれを見越しての事だったんだろうか
「待て!貴様どこへいくつもりなんだ」
「君が無事なのを確認したから学校へ行くんだよ」
「逃がさないぞ。舞美をたぶらかしてただで済むと思ってるのか?」

ここ、こいつ、何を言ってるんだ?
「貴様に決闘を申し込む!ここで戦え!」
「お兄ちゃんやめてよ!」
「うるさい!これは男同士の戦いだ、お前は見ていろ」


朝っぱらからなんて面倒な奴に出くわしたんだ。はぁ〜〜〜〜

1 だから俺は君の妹の担任なんだってば
2 袖の下渡してさっさとこの場から離れよう
3 うわっ?!いきなり殴りかかって・・・こ、こいつ・・・! 



「覚悟!!」
おい待て、人の話を聞・・・
「うわっ?!」
こ、こいつ、いきなり殴りかかってきた。しかも顔を目がけて
「なに、俺のを避けたのか。貴様・・・だが次はかわせまい!」
ま、また来た!今度も顔を狙ってきた。いったい何を考えてるんだこいつは。
「・・・・・・貴様、何者だ。俺のを二度も避けるとは」
「だから君の妹の担任だって言ってるだろ!」
「問答無用!!」
聞いといてなんだそりゃ?!うわっ危ない!いいかげんにしとけよ、くっ
「やるじゃないか。だが避けてるだけじゃ俺は倒せないぞ。かかってこい!」
もう本当に話が通じないな。果たして説得できるだろうか?

「お兄ちゃんやめて!これ以上はだめだよ!」
「や、矢島?!」
その時、矢島が俺の前に立ちふさがった。両手を広げて、まるで俺を守るみたいに。
「・・・舞美、なんのつもりだ。そいつに味方するのか」
「お兄ちゃん話聞いてよ、この人は担任だってさっきから何回も言ってるじゃない!!」

・・・あいつ、おとなしくなったぞ。ようやく聞き入れたか?
「なんだって。そうだったのか。早く言えよ」
「そっちこそ話聞いてよ!」

肝を冷やしたがようやく説得できたか。やれやれ、これでもう遅刻だな

1 また放課後話をしよう
2 まったく、君は人の話を聞かなきゃだめだぞ
3 矢島、頭叩いてやれ 



「すいませんでした!!」
いきなり頭を下げてきた。急に素直になったな。だがちゃんと叱らなくちゃ
「まったく、君は人の話を聞かなきゃだめだぞ」
「本当にすいませんでした!!先生!!」
すがすがしいなその謝り方は。ちょっと声がでかいが・・・
「お兄ちゃんのばか////恥かいたじゃんっ」
「すまん舞美、またやりすぎてしまった」

矢島の兄貴はまだ謝り足りないと言っていたが、もう時間なのでまた放課後にする事にした。


「先生・・・」
今日の授業も無事終わり、矢島と一緒に校庭に出た。
矢島の兄貴との待ちあわせ場所の鉄棒へ向かう・・・
「お、お兄ちゃん?!」
「ふん、ふん、ふんっ!」
・・・な、何をしてるんだあの男は。
足を使って鉄棒からぶらさがり、上半身を起こしてトレーニングをしていた。
あれはおそらく腹筋だろう、まったく落ち着いて待ってられないのか

1 矢島、おもしろいから気付くまで見てようぜ
2 何をしてるんだと声をかける
3 ・・・お前もああやって特訓するのか?矢島 



「もうやだほんと、お兄ちゃんってば」
「矢島。面白いから気が付くまで見てようぜ」
「・・・もう好きにしてください。知りません私」
うつむいてしまった矢島。ちょっと悪いことしたかな。
ちゃんと見えるはずのところで矢島の兄貴を見ていたが、一向に気付く気配はない。
さらに腹筋のスピードは上がってますます勢いがついてきた。
「すげえな、さっきから何回やってるんだろ」
「毎日必ず二百回はやらないと気持ち悪いって言ってます」
「矢島、お前もああやって特訓するのか?」
「あんなのできないですよ!足で鉄棒にぶらさがるなんて」

冬だというのにすごい汗だな。すぐ下の砂場には水溜まりならぬ汗溜まりができそうだぞ。


1 そろそろ話し掛けてみるか
2 鉄棒から降りた、と思ったら今度は懸垂かよ?!
3 矢島がぼそっと兄貴の話を始めた 



「・・・お兄ちゃんのことどう思います?先生」
矢島がぼそっと話し掛けてきた。これは聞こえたらまずいもんな
「正直言うといい印象じゃないな。いきなり殴りかかってきたし、話は聞かないし」
「やっぱりそう思いますか。でも・・・ああ見えて優しいところもあるんですよ」
へえ・・・優しいのかあの子が。矢島に対してか?
「お兄ちゃん勉強できるんです。わからないところがあったら親切に教えてくれたり」
急に明るくなったな、なんだか話しててうれしそうだぞ。
「ああ見えて料理できるんですよ。よく教えてもらってます」

人は見かけによらないな。俺の印象は脳まで筋肉という感じだが器用なんだな。
「ちょっと過保護だけど、でも優しいんですから」

な、なんでちょっと顔が赤いんだ?兄貴が好きなのは分かるが、それ以上の感情じゃ・・・

1 い、一緒に風呂に入ってるって前に聞いたが本当か?
2 梨沙子の事を話してみようかな
3 ようやく気付いたか兄貴。遅いぞ 



「一緒に風呂に入ってるって前に聞いたが本当か?」
思い出したので聞いてみた。いくらなんでもそれは信じられないが一応聞いておこう
「お、覚えてたんですか?!やだぁ先生ってばエッチなんだから〜////」
「今も入ってるのか?」
「・・・・・・・・・////」
矢島は顔を赤くして黙り、答えてくれなかった。しかしこれで分かってしまった。
入ってないなら否定するはずだ。今も・・・妹と風呂に入っているのか。
俺もこないだ梨沙子と入ったから兄貴に対して何か意見することはできないな。
「そうか・・・」
しかし、よこしまな俺とはちがいあいつは純粋に妹が大事なんだろう。
俺は汚れてしまった。せめて君はそうならないでほしいよ

「よし!終わった!」
矢島の兄貴は鉄棒から降りて汗をごしごし拭いている。
拭き終わってからようやく俺たちに気が付いたみたいだ。
「あっ舞美、それに先生、もう来てたんですか」

1 三人で話してみよう
2 矢島が兄貴と話したいと言ってきた。終わるまで席を外すか
3 兄貴が俺と話したいらしく、矢島に席を外せと言ってきた 



三人で朝みたいに何か話す事にした。
「今朝は本当にすいませんでした!!」
深々と頭を下げる兄貴。さっきも思ったがすがすがしい謝り方だな。
「もういいよ、気にしてない。でもいきなり殴りかかるのはよくないな」
「すいません。昔から舞美の事になると冷静じゃなくなるんです・・・」
朝と違って物腰が低く、穏やかなしゃべり方だった。
「お兄ちゃんやめてそういう言い方。なんか変だよ」
「舞美は今はこんなですが昔は小さくてよく男にからかわれたりしてて、そのたびに追い払ってました」
矢島も言ってたな。小さいころからそうだったから、妹が心配なんだな。
「最初は口だけだったんですが相手はそのうち手を出す様になりました。
 俺も最初はかないませんでしたが、負けたくなくてボクシングを始めたんです」
「確かお兄ちゃんが中学になってすぐだったっけ。そこからだから長いよね」
兄貴がボクシングを始めたのは悔しさもあったのか・・・
さっきはとんでもない奴だと思ってたがいい子だな。頭に血がのぼるとああなるタイプか

「すごいんですよお兄ちゃん!昔からいろんな大会に出て、トロフィーいっぱい獲ってるんですよ!」
「・・・まだ優勝はしたことないけどな。そううまくはいかないよな、はは」

すげえ・・・
優勝したことはないらしいがトロフィーなんてそう貰えるもんじゃないぞ。
その実力者のパンチを二回も避けられたのは運が良かったとしかいいようが無いかも。

もっと話したかったがこの季節は暗くなるのが早い。
「もう暗いな、そろそろ帰った方がいいぞ」
「はい、ありがとうございました!」
「先生、ありがとうございました!」
並んで頭を下げる矢島と兄貴。ほんと気持ちいい挨拶だな。
スポーツマンらしく礼儀正しい兄妹だ。


校門を出たところで急に兄貴だけ立ち止まった。
「あの、先生・・・」
「なんだ?」
「俺の勘なんですけど、先生って妹いないですか?」

1 敢えて伏せておく
2 ああ、いるよ。なんで分かったんだ?
3 君の妹より可愛いよとか言って 



鋭いな、なんでわかったんだ?ボクサーの勘ってやつか。
「ああ、いるよ。なんでわかったんだ?」
「やっぱり。なんとなくわかったんです。そんな匂いがしたというか」
「に、匂い・・・?」
「ええ。なんか・・・大事な物を背負っている、そんな感じがしたんです」

梨沙子は・・・例え血が繋がってなくたって、大事な妹だ。それを見抜くとは・・・
いやわからんな、血の繋がりまでわかるんだろうか?

「お兄ちゃ〜〜ん早く〜!置いてくよ〜!」
「先生、それじゃ。また話せるといいですね」
「ああ、気を付けてな」

爽やかな笑顔を見せて、待っている妹のもとへと走って・・・

「あうっ?!」
ちょ、ま、また突っ込んだぞコンビニのごみ箱に!あーあーあんなに派手に・・・
「何してんのお兄ちゃん?!もうホントどじなんだから。周り見なさいっていつも言ってるでしょ!」
「す、すまない舞美」


やれやれ、あれじゃどっちが守ってるんだか。
矢島の兄貴はすごいんだかどこか抜けてんだか・・・よくわからん奴だな
まるでどっちが守る方なんだか