もうすぐ冬休みか。しかし教師に休みなど無い。 生徒が非行に走らない様に街を見て回ったり、会議や打ち合わせをしたりで休みなど関係ない。 それに、休み前で浮き足立つ生徒をしっかりと指導せねば。 「梅田!なんだそのスカートは、短すぎるぞ」 「あらん、気付いたのねこのスケベ。ほらほらもっと見て〜ん」 いつも通りふざけようとしたので軽く注意をしておいた。こいつは警戒せねば 「寄り道しないで帰れよ」 「真っ直ぐ帰宅するだけなんてつまんないもーん」 ったく・・・毎回手を焼かせてくれるぜあいつは。一度しごいてやらなきゃだめかもな。 「・・・・・・ん?」 ふと校庭の方を見ると、見覚えのある生徒を見かけた。あれは・・・中島か。 ジャージ姿という事は部活だな。でも一緒にしてる生徒はいない、なんで一人なんだろう 1 声をかけてみる 2 いきなり走りだしたぞ。ダンス部なのになんで走るんだ 3 俺に気付いて手を振っている 声をかけてみよう。 「おーい中島〜〜」 ・・・声をかけてみたが気が付いていない様だ。 よく見たらその表情は真剣そのものだった。鬼気迫る、とまではいかないが眼が本気だった。 中島は深呼吸をしてその場でダンスを始めた。 す・・・すごい動きだ。手、足、そして首、どれをとってもキレがある。 ダンスに関しては俺はまったくの素人だからどう言っていいのかわからないが、中島は間違いなく中学生の動きには見えなかった。 すごく真剣でそれでいて堂々としたダンスだ。 部活をしている生徒たちがいっぱいいる中で臆さずに踊っている す・・・・・・すごい・・・・・・あれがあの中島なのか。 照れ屋でいつも耳が赤いイメージだったが、まるで別人だ 1 終わるまで見ていよう 2 あっ危ない、転びそうだ 3 もう一度声をかける もう冬なのに汗が飛び散っている。しかし中島はそれにかまわずに踊り続けている。 「す・・・すげえ・・・」 それを見ながら中島に近づいていたが俺にまったく気付く様子は無かった。 集中してるんだなダンスに。その顔、いきいきしてるぞ。いいなぁ・・・ひた向きで あんなにがむしゃらで一生懸命な時は俺にだってあったはずだ。今はどうだろう? 「はぁ、はぁ、はぁ」 やがてダンスを終えてしっかりと決めのポーズのまま荒い呼吸をしていた。 「すばらしいぞ中島!あんなに凄かったなんて」 「・・・・・・せ、先生?」 俺の方を見て赤くなっていた顔をさらに真っ赤にし、湯気が出てきた。 「やだぁあああっ!なんで先生がいるんですかぁ?!」 「そんな驚くなよ、俺がいちゃおかしいか?」 「見てるなら見てるって言ってくださいよ!恥ずかしい〜////」 1 なんで恥ずかしいんだ、あのダンスは恥じる様なものじゃないだろ 2 汗をふいてやろう 3 ちょ、どこへ逃げるつもりだ、待てよ 「もぉ〜〜やだぁ〜〜!」 なんと中島はその場から走り出してしまった。いったいどこへ行くつもりなんだ。 「おい待てよ中島、どこへ行くんだ。おい!」 「見られたぁあ〜〜〜////」 なんて速さだ。ダンスだけじゃなくて足の速さもすごい。 くそっだめだ、とてもじゃないが追い付けそうに無い。見失わない様にするのが精一杯だぜ 「中島待て、待てってば!」 端から見たら生徒を追い掛け回しているとんでもない教師にしか見えないだろうな だが今は自分の事よりあいつの事だ。中島は校舎の裏の方へと走っていった。 こ、ここならたぶん逃げ場はない。ようやく話ができるぞ 「はぁ、はぁ、はぁ・・・」 いた。中島を見つけた。まだちょっと距離は離れているが射程距離だ。 「落ちつけ、俺はただ話がしたいだけだ」 「・・・・・・・・・」 中島は荒く呼吸をしたままこちらを見ている。また逃げ出したりは・・・たぶんしないだろうが、油断大敵 1 よし、いい子だからおとなしくしてろ 2 今の行動はおかしいのでちゃんと注意しなきゃ 3 急に頭に衝撃が・・・う、あ・・・やば そのまま中島に近寄ろうとしたその時 「うっああっ?!」 あ、頭に何かとんでもない衝撃が走った。これはたぶん何か落ちてきたのかもしれない 「せ、先生・・・?大丈夫ですか?!」 中島がこっちに走ってくるのが見えた。ああ、意識が無くなっていく・・・・・・ 〈Saki's Side〉 いきなり先生の頭に何かが当たった。それは勢い良く跳ねていった。 「ぼ、ボール?」 よく見えなかったけど茶色いのはわかった。バスケットボールかもしれない。 けどもうどこかにいってしまい確認できなかった。 「先生大丈夫ですか?!」 その場に倒れた先生の体を揺すってみた。でも反応はない。 目は閉じたままで、息が聞こえない。 これって・・・やばい? いい、いったいどうしたらいいんだろう私。 こういう時にはどうしなきゃいけないのか保健で習ったはず、思い出して 1 じ、じ、人工呼吸!! 2 もう一度呼び掛けてから反応がないか体を叩く 3 救急車を呼ばなきゃ まず倒れた人の呼吸を確保するのが最優先。 「先生死なないで!わ、わ、私が助けるから!」 えと、確か・・・こうして息を吹き込むんだよね。 先生の唇って厚いんだ、それになんか・・・その・・・//// だめ!こんな時に変なこと考えちゃだめ、先生を助けなきゃ。 い・・・いきますよ先生、私の酸素、受け取ってください! 私は胸いっぱいに空気を吸い込み先生の唇に重ねて吐き出した。 先生お願い目を覚まして。死なないで! つ、次は心臓マッサージだよね。あまり圧迫しすぎないで、でもちゃんと心臓に刺激を与えなくちゃいけない。 ああっもう、考える暇はないわ、早く先生をマッサージしなくちゃ! 「はっ、はっ、はっ、はぁ、はっ、はっ」 手のひらの固い部分を胸に当ててマッサージするんだ。頑張らなきゃ。先生、早く目を覚まして 先生いやだよ。もっといっぱい話したいのに。 なんでさっき逃げたの?こうなるって分かってたらきちんと話しておけば良かった 先生、いやだぁ・・・目をあけて!! 1 もういっかい人工呼吸 2 もっとマッサージしなくちゃ 3 いけない、救急車を い、やだ、先生、もう会えないなんていやだよ。 やだ、まだ全然話してないのに。先生・・・いなくなっちゃいやだぁ。 もう一回私の息を吸って。そうすればきっと立ち上がれるから。だから! 私は先生の顎を掴み、もう一度胸いっぱいに空気を吸って唇に重ねた。 ¨れろっ¨ いきなり舌にぬめっとしたものが絡み付いてきたのでびっくりしてしまう 「きゃああっ?!なな何、先生の舌が動いたぁ!」 「・・・な、中島・・・ここはどこだ?」 これって・・・あの時と同じ。夏に私が倒れた時、先生が・・・・・・//// 「こ、ここ、校舎の裏です」 「ああそうか。いきなり逃げ出したから追い掛けてきたんだっけ。そしたら頭に何かがぶつかったんだ」 先生は起き上がって、優しく話し掛けてきた。 「ちょっと話さないか?」 1 また逃げ出してしまう 2 は、はは、はい//// 3 あ、あの・・・その・・・ 〈Teachar's Side〉 「は、はは、はい////」 中島は顔を真っ赤にし、若干引きつり笑い気味でだったが承諾してくれた。 「良かった。いきなり逃げ出したからびっくりしたよ」 「本当にごめんなさい!さっきは恥ずかしくて」 どうして恥ずかしがるんだ。あんなにすばらしいダンスが踊れるんだから自信を持てよ。 「私、集中しちゃうとまわりが見えなくなっちゃうみたいなんです。先生に見つめられてたと思うと・・・////」 それで恥ずかしかったのか。ダンスに恥じらってたわけじゃないんだな。 「せ、先生とまたキスしちゃった。しかも夏の時みたいに人工呼吸で」 ・・・忘れ物しない蒸し暑い夏のある日、1人で練習してた中島が熱で倒れたんだ。 それで俺は必死になり人工呼吸したら、中島から舌をからめてきたんだよな。 その事と今日のダンスで、控えめに見えて芯がしっかりした子だとわかったよ。 1 どうして1人で踊ってたんだ? 2 もう一回見せてくれないか、是非見たい 3 なんだ、背が高い生徒が来たぞ。あれは・・・ 4 おや?背が低い色黒な生徒が来た。あれは確か 「どうして1人で踊ってたんだ?」 「えっ?!あ、あの、その、特に変な意味は・・・ありません」 なんでいま動揺したんだ。なんだか嫌な予感。 まさか・・・仲間外れにされてるとかじゃないよな。許さないぞそんな卑劣な真似は! 「教えろ。まさか部室で踊れないから校庭で踊ってたのか」 「きょ、今日は休みなんです。でも1日でも踊ってないと不安で・・・」 違う、何かを隠してるな。きっと・・・悪いことかもしれない 「・・・中島、本当にそうなのか?」 「・・・・・・ほ、本当ですよ・・・・・・」 なんだか尋問してるみたいで気が引けるが、中島のためだ。 「じゃあ言います。どうして校庭で踊ってたのか」 「・・・うん」 「わ、わ、私、見られてると興奮しちゃうんです!!」 な、なんだと?!おいまて、それは衝撃の告白じゃないか!! 「部活の時間なら校庭に人がたくさんいるから、あそこで踊ればみんな見てくれると思って」 涙目でもじもじしながら言うその姿・・・かわいいよ。なんて言ったら失礼だけど。 そんな性癖があったのかぁ・・・人は見かけによらないな 1 俺も性癖を明かして中島と秘密を共有しよう 2 その性癖はさておき、踊るのが好きなんだろ?わかるよ 3 じゃあ今から駅前で踊ろう、もっと興奮しちゃうぞ そう言われてみればさっき踊り終わった時は恍惚の表情を浮かべていた様な・・・ だが、その性癖はさておき踊るのが好きなんだろう。ただ見られるのが好きならあんなにキレのあるダンスはできないはずだ。 「先生、私のこと変な子だって思ってるでしょ」 「そんなことない。変わった行動をするとは思うが中島は一生懸命だよ」 目を丸くしてぱちぱちさせている中島。俺の口からそんな言葉が出るとは思わなかったのかな 「い、一生懸命じゃないですよ、私」 「中島はひた向きだよ。俺、それなりにいろんな生徒を見てきたんだぜ。だから間違いない」 「う、うう・・・ぐすっ」 ちょ、なんで泣くんだよ?!俺・・・傷つけちゃったか 「ごめん中島。そんなつもりじゃ」 「いいんです、その、びっくりしちゃって。今まで誉められたこと無かったから」 周りの奴は見る目が無いのか?ちゃんと見てれば誉めたくなるはずだぜ。 「あはっ、あ、どうしよ、な、涙が出ちゃう」 1 ガラじゃないがそっとハンカチを渡す 2 もっと誉める 3 微笑みながら見守る 泣き虫だなぁ。誉められただけで泣いちゃうなんて・・・ でも気持ちはわからないでもないぜ。俺だって今まで誉められるのとは無縁だったから 「勉強もできるだろ」 「そうでもないですよぉ〜////先生やめてぇ〜〜////」 や、やば、可愛いぞ。耳があんなに真っ赤になってる。もっと誉めたくなる様な不思議な気持ちを起こさせるよな。 「もういやですぅ!先生、セクハラですよ!」 「痛いよ中島、おい。叩くな」 いたたたつねるなってば、しかもそんな笑顔で。目をそんなに笑わせてもう なんだか、魅力的な子だな中島は。勝手なイメージだが優等生っぽいと思ってたよ ところが実際は変わった行動を取ったり、踊る姿がかっこよかったり・・・・・・ やはり人は見た目だけでは判断できないな。 「あっ、もう空が暗くなってきましたね」 「本当だ。すまんな長話しちまって 「いえっ。あ、あの、今日はありがとうございました!」 ぺこっと深くお辞儀する中島 1 気を付けて帰れよ 2 危ないから途中まで送ろうか 3 おや、あそこにいるのは・・・熊井か? こんな暗いのに1人で帰らせるのは危ないな・・・・・・ 「中島、一人じゃ危ないだろ。途中まで送ろうか?」 「ええっ?!あ、あの、その、わかりました、お願いしますっ」 家は駅前のスポーツ用品店だからそれほどかからないだろうが、とりあえず送ろう。 「先生と一緒なんて夢みたい」 「大げさだな。そんな大したことじゃないだろ」 「ううん、信じられないです。キュフフフ♪」 それは笑い声か?なんだか・・・か、変わった笑い方だな。中島には普通の人とは違う何かがあるな。 この時期じゃこんな時間でもう真っ暗だ。 校門を出ようとしたら中島に呼び止められた。 「なんだ?」 「あ、あの、手・・・つないでいいですか・・・?」 ええっ、そういや他の生徒とはあまりしたことなかったな。 あまりというか全然ない。お願いされた事も 1 周りの人に誤解されるからごめんな 2 ・・・いいよ。ほら、とその小さな手を握る 3 どうして?と聞いてしまう 「いいよ。ほら」 その小さな手を握ると、中島はきゃっと声を出した。 そしてちょっと俺を見つめてからキュフフと笑った。その笑い声、なんかいいな・・・ 「嬉しいです、先生に手を握ってもらって♪」 真っすぐに俺を見上げるそのきらきらした瞳に思わずどきっとしてしまった。 な、中島・・・お前はこんなにきれいな目をしてたのか。 やばい、そうやって見上げられるの弱いんだよ ・・・きっと顔赤いだろうな、俺。良かった早く暗くなってくれて。見られたら大変だ 「先生、痛いっ」 「あっごめん。力入りすぎた」 学校から中島の家までそんなにかからなかったけど、けっこう長く感じた。 それはたぶん手を握ってるからだろう。途中、何度か生徒だというのを忘れかけた。 やわらかいかと思ったが意外としっかりしていた手。芯の強い中島らしい手だ。 「よし、ここまで来れば大丈夫だよな」 「は、はい」 中島の家の少し前まで来て俺はその手を離した。 「あの・・・先生!」 「ん?」 「あ、あの、その・・・」 中島は何か伝えようとしてるな。なんだろう 「も、もう少しだけ、手を握っててくれますか」 1 いいよ、ほら 2 ごめんもう帰らなくちゃ 3 背後から聞き覚えのある声。この甘ったるい声はまさか 目をきらきらとさせながらお願いしてくる。 「いいよ・・・手を出して」 「あ・・・っ////」 小さな手だ。嗣永と同じくらいの大きさだろうか。 「なんかだんだんあったかくなってきてないか」 「せ、先生が握ってくれてるからですよぉ////」 なんだか中島はさっきからずっと耳まで真っ赤だな。もう・・・照れ屋なんだな。 と思ったら、踊ってる姿を誰かに見られると興奮してしまうという性癖があるし。 知れば知るほど奥が深い神秘的な子だな。 「あ、あの、もういいです!今日はありがとうございました」 「また明日な」 「はいっ////」 中島はなかなか家に入らずずっと手を振っていた。 ふと思ったが、あんな子がもし俺の娘だったら・・・・・・ な、何を考えてるんだ。生徒を自分の娘だと妄想するなんて 街を吹く風は寒かったが、 俺の手にはあの小さなぬくもりがずっと残っている気がした。