今日は佐紀お嬢様の17回目の誕生日です。 お嬢様のお誕生日には盛大なパーティーを行うので、その準備のためにみんな大忙し。 窓ガラスに飾り板をおしつけスプレーを吹き掛けたり、テーブルクロスを敷いて皿やグラスを並べたり、 コックさんが腕によりをかけて作った料理を丁寧に取り分けたり、植木鉢の植物に細かい飾りをつけたり・・・ 時間がいくらあっても足りないくらいですが、みなさんとても生き生きしています。 誰も嫌な顔ひとつせずに話しながら、そして真剣に誕生パーティーの準備をしていました。 僕はここで執事としてお勤めができて幸せです・・・ 「天井が寂しいな。何かぶら下げない?」 「じゃあこのぬいぐるみはどう?かわいくて佐紀お嬢様にぴったりだよ」 みなさん・・・お嬢様が好きなんですね。 「?」 おや、電話だ。この番号は・・・佐紀お嬢様?!いったいどうなさったのだろう 1 心配なので出ましょう 2 ちょっと忙しいので少ししてからかけなおす 3 今度はメールだ 心配だ、いったい何があったのでしょう? 「もしもし佐紀お嬢様・・・」 まさかお怪我をされたとか。せっかくの誕生日なのになんて不幸なんだ だが受話器の向こうのお嬢様は僕の不安を簡単に吹き飛ばしてくれました。 ¨もしもし〜?あ、執事さん。ごめんいま忙しい?¨ 明るいお声、これはいつもの佐紀お嬢様ですよね。 「ただいま佐紀お嬢様の誕生パーティーの準備の最中です」 ¨そうだよね・・・ごめん、やっぱいいわ。もうちょっとしたら帰るね¨ ・・・どうなさったのだろう。気になります 「僕に御用ですか?今でしたら抜けられない事もないですけど」 ¨本当に?ん〜〜・・・どうしようかな、あのね・・・ 1 今から学校に迎えに来てほしいんだけど・・・¨ 2 待ち合わせしたいんだ。今から場所言うから・・・¨ 3 ・・・やっぱり、いい。またあとでね¨ 今から学校に迎えに来てほしいんだけど・・・¨ さ、佐紀お嬢様からのお迎えの命令とあらば! 「今すぐに行きます!」 ¨ありがと・・・ちょっとびっくりしたよ。声おっきくて¨ 「ごめんなさい・・・興奮してしまいました」 ¨待ってるね・・・えへへ、それじゃ¨ ゆかねばなりません。みなさん、少しの間席を外します。最優先事項です! 「おいどこへいくんだ」 「手伝いを放り出してどちらへいくのかしら?」 「佐紀お嬢様からのお迎えのお願いです!失礼いたします!」 同僚やメイドさんにお詫びをして佐紀お嬢様の学校へと急ぎます お屋敷はC館とB館に分かれていますが、お嬢様達は同じ学校に通っているのです。 思ったより早く着きましたね・・・ふう、はぁ。 「お〜〜い、こっちこっち〜」 このお声は・・・佐紀お嬢様!間違いありません 「佐紀お嬢様ただいま参ります!」 佐紀お嬢様は校門の近くにいらっしゃいました。 「・・・////」 「ん?どうしたの執事さん、なんか顔赤いよ」 あ、あの・・・いえ、その、僕が顔が赤いのは・・・ 1 スクール水着姿ではなく普通の制服を間近で見たものですから・・・ 2 風に髪がなびくお嬢様のかわいらしいお姿に見とれてしまい・・・ 3 は、走りすぎて体温が上がった・・・ 佐紀お嬢様はブラウスの上にクリーム色のセーターをお召しになっていました。 「な〜に?なんか変?この制服。どこかおかしいの」 「いいえっ!あの・・・失礼ですが、佐紀お嬢様の制服姿を拝見するのが新鮮といいますか」 「あ〜〜、私いつもスク水だもんね。っていうかお屋敷帰ってからはほぼ水中だから」 普通は逆でしょうね。制服姿より水着姿にぐっときてしまうと思いますが・・・ やはりお屋敷のお嬢様は個性的です。枠にはまらない魅力のある方ばかりです 「なんかかわいー。顔が赤い執事さんって」 「お・・・おやめください////佐紀お嬢様」 「うふふふふ♪」 「お嬢様ぁ〜////」 悪戯をなさる様に肘をぐりぐりしてくる佐紀お嬢様。 「い、いったいどの様なご用件でしょうか?」 「あ〜〜。ううん、一緒に帰りたかったから」 じっと僕を見上げる佐紀お嬢様。とても・・・かわいらしいです 「それにやっと二人になれたからね」 「わっ////」 なんと僕の腕にご自分の腕をからめて・・・! 「だってさー。執事さんってぜーんぜん私にかまってくれないからさー」 1 ごめんなさい、寂しくさせてしまいました 2 今から埋め合わせいたしますよ 3 あっ佐紀お嬢様どちらへ 僕が何か言おうとしたら、佐紀お嬢様は腕をからめたまま走りだしてしまい・・・ 「うわぁっ!」 「いこっ。一緒に帰るの!」 危うく転びそうになるところをなんとか踏みとどまりましたが、佐紀お嬢様の勢いは止まりません 「勢い付いたら止められないよ!この佐紀お嬢様は!」 校門から離れ、学校からも離れていきます。 「ちょっお嬢様速いですよ!お嬢様ぁ〜っ」 「速いのは水中だけじゃないのよ。陸だって負けないんだから」 さすが水泳で鍛えた筋力です。僕ではかないませんよ・・・ 「っと。やっぱりもう少しゆっくりいきましょ」 急に立ち止まったので思わず転びそうに・・・B館のお嬢様は奔放ですねぇ 勢いがついたら止まらないはずでは・・・いたたたた 「もうすぐ冬だね。落ち葉が・・・」 「そうですね」 はらりと舞う落ち葉を見て、物憂げなお顔になる佐紀お嬢様。 「ねえ執事さん・・・」 「なんですか?」 「・・・行きたいとこあるんだけど・・・いい?」 1 はい、どちらへ行かれるのですか? 2 佐紀お嬢様の言うことを断るなどとんでもありません 3 そろそろパーティーの準備の時間ですが・・・ 「はい、どちらへ行かれるのですか?」 「ついてくればわかるよ」 学校からやがて街へと移動し、その中を歩いていきます。 行き交う人々、車、さまざまな人がここに生きています・・・ やがて佐紀お嬢様はコンビニの前で止まりました。 「こちらですか?」 「ううん、別のとこだけどここも行きたくなった」 佐紀お嬢様は暖かい缶のココアをひとつ購入しすぐに出ました。 「お〜〜いし〜♪あったかぁーい」 ココアをお飲みになるそのお姿、かわいらしいです・・・ 「はい、執事さん」 「えっ?!」 「いらないの?」 ここ、これは間接キスになるのでは 「なぁんだ、じゃあいいや」 しかし佐紀お嬢様はすぐにそのココアを引っ込めてしまったのです。ああ・・・ 「着いたよ、ここ」 「ここは・・・?」 佐紀お嬢様は駅前のとあるお店の前で足を止めました。 「・・・・・・」 「どしたの?私がこういうとこに来るの変?」 「いえ、綺麗なお店だなぁと思いまして」 ここは・・・アクセサリーショップでしょうか。 変な派手さのない店構え、落ち着いた色使いの看板・・・ 控え目だけどお洒落なお店ですね。 「いこ、一緒に」 1 一緒に入りましょう 2 ぼ、僕は外で・・・ 「ご一緒いたします」 僕の返事を聞いてふふっと笑う佐紀お嬢様。 「なんかカタいなぁ〜。変なのぉ」 中は水色が基調の落ち着いた色合いでした。なんだか水の中にいるみたいだ。 「ここは海の生き物をかたどったアクセサリーだけ扱ってるんだよ」 そうなんですか。ああ、だからお店の中が海の色なのか 並べてある物を見てみるとヒトデやクジラ、魚をかたどったピアスや指輪が沢山ありました。 なんとおしゃれなお店なのでしょう。水の中が大好きな佐紀お嬢様にこれほどお似合いの場所はありません 「ねぇ似合う?執事さん」 お嬢様はイルカの指輪をはめて見せてくれました。 小さな指とかわいらしいデザインの指輪がシンクロしています 「とてもお似合いですよ!」 「ありがとっ。嬉しいな、ねえねえこれは?」 今度はヒトデのネックレスです。これも・・・かわいい//// 「お似合いですよお嬢様」 「どれが一番似合うかな?」 1 イルカの指輪ですよ 2 ヒトデのネックレスがいいです 3 このクジラのピアスはどうですか? 「イルカの指輪です」 「まじ?!実は・・・私もそれが一番気に入って・・・」 良かった、佐紀お嬢様と心が通じ合いました! 「わぁ〜〜、似合うって言われちゃったぁ♪」 すっかり舞い上がっている佐紀お嬢様をよそに、僕は店員さんにそれを購入すると言いました。 「・・・ガンバってね」 「えっ?」 「可愛い彼女じゃない。敬語なのが気になるけど」 「あ、ありがとうございます////」 か、彼女・・・ 他の方から見ればそう見えるのでしょうか? 「ありがとう執事さん。最高のプレゼントだよ」 僕にはその佐紀お嬢様の笑顔が最高のプレゼントです・・・ 「・・・やばっ、もうこんな時間!」 「え・・・ああっ、まずい!もうパーティーが始まってしまいますよ!」 「急いで帰らなきゃ!」 余韻に浸る間もなく急いでお屋敷に帰りました。 「おそーい!手伝いもしないで、しかもデートとはいい度胸ね」 「執事さんあとで話があるからね・・・ふふっ」 えりかお嬢様と愛理お嬢様の冷たいお出迎えを受けまして、佐紀お嬢様の誕生パーティの開始です 「清水佐紀お嬢様、17歳の誕生日、おめでとうございます!」 一斉に鳴らされるクラッカー、飛び出してひらひらと舞い落ちる飾り。 「みんなありがとう、うれしいっ!」 着替える余裕が無かったので制服姿のままでしたが、 さすがに誕生パーティでも水着のわけにはいきませんよね・・・去年はどんな格好だったのでしょう? 今夜はお屋敷全体でお祝いしましょう! パーティーの時のお屋敷は嵐の夕食をさらに越える¨台風¨なのです。 「はいはい踊るよ〜!ミュージックスタート〜!」 いきなりB館のお嬢様が佐紀お嬢様を中心にして並びました。 そしてどこからかかかってきたのはあの音楽です。 ¨ジン♪ジン♪ジンギスカーン♪¨ すごい熱気ですね。早くも台風が巻き起こって・・・ 「ひつじさんも踊るよ!ほら、ジン♪ジン♪ジンギスカーン♪」 「こ、こうですか?」 「かたい〜!こうやってガーッといくの!」 はしゃいでいる舞お嬢様、そしてすでに汗だくの舞美お嬢様。 お屋敷に吹き荒れる台風はもはや誰にも止められません。 「・・・執事さん、いた」 「さ、佐紀お嬢様?」 踊り疲れて座ろうとした時に、佐紀お嬢様がやってきました。 「二人に・・・ならない?」 1 ここで話せないお話があるのだろうか 2 はい、わかりました 「はい、わかりました」 「・・・抜け出そう。たぶんいなくても分からないから」 大音量で音楽が鳴り、人々が踊っている中を佐紀お嬢様と二人で・・・ 「はぁ〜〜涼し〜〜」 「お屋敷はまるで真夏ですね、ふう」 お屋敷から出て、近くの湖のほとりに座った。 「もう汗だくだよぉ・・・ふぅっ」 汗で髪が濡れた横顔が月明かりに照らされ、思わずどきっとしてしまいました。 「・・・初めてだね、執事さんとお屋敷じゃない場所で二人きりになったの」 「そうですね・・・」 「嬉しかったよ。だって・・・いつも違う誰かと一緒だから・・・」 途中で声が震えたかと思ったら、佐紀お嬢様の瞳からつぅっと涙が・・・ 「お嬢様・・・?!」 「あ、やば・・・我慢、してたのに。へへ、泣いちゃった・・・っ」 「あ、あの、佐紀お嬢様?!」 「ごめん・・・我慢できなくて・・・うう・・・っ」 僕のせいなのか 佐紀お嬢様が泣いてしまったのは・・・ 1 そっと抱き寄せてごめんなさいと言うことしか僕には・・・ 2 涙を拭ってから抱き寄せます 3 佐紀お嬢様はそっと指を見せてきました 「お嬢様、あの・・・」 僕はしなければいけないと思った事をしようと決めました。 「あ・・・」 そっとその涙を拭い、小さな佐紀お嬢様を抱き寄せました。 「ち、違うもん。寂しいから泣いてるんじゃない」 「・・・・・・」 「・・・嬉し泣き。だから、執事さんのせいじゃない」 こんな時でも僕を気遣うその優しさに胸が痛みます・・・ 「この涙は悪い意味の涙じゃないもん。ほら」 佐紀お嬢様はそっと指を見せてくれました。そこにはめられたイルカの指輪・・・ 「人は嬉しい時でも泣くでしょ?ありがとう」 「佐紀お嬢様・・・お誕生日おめでとうございます」 「どういたしまして、執事さんっ」 どれくらい抱き合っていたのでしょうか。長かった様な、短かった様な・・・ 「これはお願いだけど・・・」 どんっ、と僕の胸を叩いて 「少しは色んなお嬢様をかまいなさいっ」 「・・・はい」 うふふふ、と笑う制服姿の佐紀お嬢様。 月に照らされたその姿はとてもお美しく・・・ どこか儚げでした