僕が小さくなるという事故があったあの日からしばらく過ぎた。 
直接その事故に立ち合っていないお嬢様も、他のお嬢様からそれを聞いていた。 

「あ、あの、桃子お嬢様・・・どちらへいかれるのですか」 
「いいから黙ってついてきて。足元には気をつけてね」 

突然桃子お嬢様に呼び止められ、森の中にある物の効能を知らないと危険だとおっしゃり・・・ 
こうして引っ張る様に僕をB館の森へとつれてきた訳なのですが・・・ 
「へぇ、そのキノコってC館の森にあったんだ。こっちじゃそんなキノコは見たことないなぁ」 
「そうなのですか・・・」 
「B館の森にも危険な食べ物はいっぱいあるよ!もぉが教えてあげるから」 

確か桃子お嬢様は以前この森で暮らしていましたよね。 
夢遊病のせいで、と聞きましたが時々廊下でおやすみになっている事があるくらいで、特に危険な様子は見受けられません。 
C館に来られてから症状が改善にむかっているのではないでしょうか。 
「あっ、さっそく見つけた!このキノコ」 
「こ、これは・・・?」 

桃子お嬢様が指差す先には、見るからに毒々しい紫色のキノコが 

1 これはいったい何ですか 
2 一口くらいなら食べても平気ではないですか? 
3 おや、虫が飛んできました 



¨ブ〜〜〜〜ン¨ 

・・・この鈍い音は、羽音か? 
そっちの方向を見ると大きな蜂が飛んでくるのが見えた。 
「ひゃああっ?!うわぁああ最悪、蜂が飛んできたぁ!」 
蜂を見た途端にあわてふためく桃子お嬢様。 
「落ち着いてください、何もしなければ危害をくわえる事はありません」 
「怖い〜!もぉ、蜂は嫌いなの!執事さん追い払ってぇ!」 
僕の背中にぴったりと張りつき怯えている。背中に、お嬢様の震える手が・・・ 
「そっとこの場から離れたら大丈夫ですよ。刺激しない様に・・・」 
「ほ、本当に大丈夫なのぉ?怖いよぉ」 

蜂を刺激しない様に一歩ずつ後退りしながらその場を離れる。 

¨ブ〜〜〜〜ン¨ 

だが突然蜂がこちらに向かって飛び掛かってきた。どうしてだ?何もしていないのに 

「あうっ?!」 
「し、執事さん!」 
しまった・・・変なところを刺されてしまった。 
「刺されたんでしょ?!大丈夫?!見せて!」 
「へ・・・平気です・・・早く消毒しなくては」 
「どこを刺されたの?」 

1 手の甲を・・・ちくっと 
2 く、首筋です 
3 服の上からお腹を刺されました 



まだ刺そうとしていた蜂を何とか追い払い、刺された場所をおさえた。 
く・・・い、痛い、こんなに痛いとは思わなかった。 
「どこ刺されたの?見せて」 
「ふ・・・服の上からお腹を刺されました」 
「見せて!!早く、執事さん!!」 
「ま、待ってください、ちょっと・・・座ってもいいですか?」 
立っていられない訳ではないけど・・・座った方が楽なのは確かです。 
「ここを・・・やられました」 
そっとシャツを脱ぎお腹を桃子お嬢様に見せた。桃子お嬢様から見ておへそより少し右の場所を・・・ 
「・・・腫れちゃってる」 
眉間にしわをよせてそこを見ているお嬢様。 
「だ、大丈夫です。少し休めばなんとか・・・」 
「あの蜂は毒を持ってるの。だから怖くて・・・」 
「・・・ど・・・毒?!」 
「痺れるくらいだからそんなに心配ないよ。でもちゃんと処置しなきゃ」 
桃子お嬢様は一呼吸おいてから再び僕に話し掛ける。 
「吸わせて、毒」 

な・・・なんですって?! 

1 お嬢様にその様な真似などさせられません! 
2 そんな事をしたら桃子お嬢様が危険です! 
3 や、優しくしてください、痛いので・・・ 



す、吸い出すという事は、毒を口に含むという事では・・・ 
「そんな事をなさったら桃子お嬢様が危険です!!」 
「大丈夫。すぐ吐き出すから。それより早く吸い出さなきゃ執事さんが危ないよ」 
それでも吸おうとしてくる桃子お嬢様を僕は止められなかった。 

「いくよ・・・ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね」 
「は・・・うっ!」 
唇がそこに触れたら激痛が走った。鈍い電気が流れた様な痛みが 
「ん、んぅ・・・ん・・・っ」 
「はう・・・あぁっ、んんっ」 

い・・・痛い・・・っ 
あまり味わった事のない痛みに思わず声をもらしてしまう。 
「もうちょっとだけ我慢してね、すぐ終わるから」 

時間で言うならそんなにかからなかったはずなのに、何故か長い間吸われている気がした。 

く・・・う・・・はぁ、はぁ 

「・・・?!」 
い、嫌な音が聞こえる。この音は間違いない、あれだ! 

さっきの蜂かどうかはわからないが再び僕を迂回している。 
も、桃子お嬢様は毒を吸うのに夢中で気が付いていない 

1 あっちへ行けと手で追い払う 
2 下手に刺激するのは・・・ 
3 上着を振り回して追い払ってやりたいが、桃子お嬢様がまだ吸っている 



く・・・手出しができない、いや・・・刺激すればもっと危険かもしれない。ここは何もしない方が・・・ 

「あ、うっ?!」 
蜂は容赦なく今度は僕の胸を刺してきた。ちょうど真ん中あたりを深々と。 
「執事さん?!大丈夫?!」 
「・・・こ、今度は胸を刺されてしまいました。なぜかあの蜂は僕達を快く思ってはいない様ですね」 
「待ってて、いますぐ助けなきゃ!」 
「・・・は・・・!」 

今度は桃子お嬢様の唇が胸に吸い付いてきた。 
・・・い、いけません、そんなに激しく、僕だって男なんです。 

僕はこんなときになにを考えてるんだまったくもう 

「もう大丈夫だよ。でも早くお屋敷で薬塗らなきゃ」 
「そうですね、急いだ方が・・・」 
だが言葉に反してお嬢様はなかなか離れようとはせず 


「執事さんと密着してるぅ。こんなのなかなかないチャンスなんだね」 
「あ、あの、桃子お嬢様、そろそろ戻りたいのですが」 
桃子お嬢様は僕にかぶさったままにやりと笑いました。 
「執事さん独占♪」 
「お願いですお嬢様・・・なんだかだんだん息苦しくなってきました」 

しかし桃子お嬢様は僕から離れようとはしませんでした。 
「もっと吸ってほしかったら吸ってあげますよぅ♪ウフフフフフ」 
「離してください!め、めまいがしてきました」 


その後しばらくしてやっとお屋敷へと戻れました。 
・・・幸いにも腫れただけで大した怪我はありませんでした。桃子お嬢様の応急処置のおかげでしょう 

「よかったぁ。執事さんが無事で」 
「桃子お嬢様のおかげですよ。僕が助かったのは」 
「あ、あの・・・勉強したかったけど、ダメになっちゃったから、また今度勉強しない?」 

こ、これは・・・桃子お嬢様からのお誘いでしょうか 

1 はい、喜んで 
2 せっかくですが遠慮します 
3 ・・・なにを企んでいらっしゃるのだろうか 



「はい、喜んで」 
「やったぁ!執事さんと二人で勉強だぁ〜〜♪」 
うれしさのあまりぴょんぴょん飛び跳ねる桃子お嬢様。 
「そうそう、さっき紫色のキノコあったでしょ?あれは猛毒で食べると五分以内に気絶しちゃうの。気をつけてね」 
「そ・・・そんな危険なものがあの森の中に・・・」 

・・・もし勉強にいく時は細心の注意を払わねばならないだろう 

「うれしいな〜♪執事さんと勉強だぁ〜」 

さらに高く飛び跳ねる桃子お嬢さ・・・ 

¨ガコッ¨ 
「あ・・・・・・っ」 
「も、桃子お嬢様?!」 
「はしゃぎすぎちゃったぁ・・・あは・・・」 
ベッドの上で飛び跳ねていたため天井に頭をぶつけ、そのまま気絶してしまった。 
「はしゃぎすぎですよ・・・お嬢様」 

僕は桃子お嬢様をベッドに寝かせ、さっき刺された場所を撫でた 
「・・・ここを・・・お嬢様に・・・」 

触るとかすかに熱いのは、お嬢様のぬくもりだからかもしれない 
必死に吸い出すお嬢様の事を思い返すと、なんだか・・・恥ずかしくなる気がした。