「・・・あ〜〜〜うぜぇ」 

ふざけてんじゃないぞまったく。なんだよこの天気は? 
今日は朝から晴天っていうから傘を持たずに来たらこれだ 

濡れて帰れってか・・・冗談じゃないっつーの。 
「先生傘無いの?」 
「ああ・・・」 
「うっかり天気予報信じちゃったんだ、バカだねー」 

俺に憎まれ口をききながら傘をさして帰る生徒達。そりゃ、予報を参考程度にはするだろう。 

あ〜〜〜あついてねぇな、金欠だからわざわざ帰るためだけに傘は買えないしなぁ。 
「・・・・・・お」 

ふと、ぽつりと玄関にたたずむ生徒を見つけた。 
あれは・・・嗣永か。傘持ってるな、ピンク色のやつ。 
他に生徒は見当たらない、か 

1 近くまで入れてってもらうかな 
2 あいつに借りは作りたくない。濡れて帰るか 
3 げっ気付きやがった、あーうぜ〜〜 



・・・うわ、こっち向いた。やばい気付かれた。 
おいおい勘弁してくれよ、いまの俺はお前にやれるモノ無いぞ。 

あーまたあのうざったい笑顔を向けてくるんだろうなぁ〜〜あ〜やだやだ。 

「・・・せんせい、どうしたの?」 
「えッ?!い、いや」 

声が裏返っちゃったじゃないか。案外普通のトーンで話し掛けてきたから。 
嗣永、意外と声が低いんだな。 

「傘持ってないんだ。良かったら入れてあげるよ」 
「い、いいよ。お前にそんな気を遣われたくない」 
「困るでしょ。それとも嫌?」 

・・・またなにかねだるつもりじゃないか、こいつ。 
しかし普段の腹黒いぶりっこな嗣永とは少し雰囲気が違う様な気がする・・・ 

1 それでも濡れて帰るのを選ぶよ 
2 人の親切には素直に従わなきゃな 
3 何が欲しいのか聞いてみる 



人の親切には素直に従うべきだ。ありがとう嗣永。 
「じゃあ入ってやるよ」 
「ホントに?よしっ、じゃあ一緒にかえろ♪」 

・・・はは、おまえ俺より頭ひとつ以上背丈が小さいじゃないか 

「届かない〜、せんせいが傘もってぇ〜」 
「わかったよ、ホラ」 

しっかしマジですげえ雨だな。こりゃあ明日も降るんじゃねえのか? 
「・・・・・・」 

うざいくらいに話し掛けてくるかと思ったらなんだか静かだな。 
「嗣永起きてるか?」 
「・・・寝てた・・・」 

・・・嘘だろ。その顔、何か抱えてますって書いてあるぜ。 
そうだ、今日はちゃんと何か悩んでないか聞き出してやる。 

1 率直に聞く 
2 焦らず少し話してから聞いてみる 
3 たまにはふざけてほっぺつついてやろうか 



「嘘つくな、起きてただろ。先生にはわかるぞ」 
ぷにゅっとそのほっぺをつついてみた。いつも冷たいからたまにはふざけて・・・ 
「・・・せんせい、無理しなくてもいいから」 
「はっ?む、無理ってなんだ」 
「そういうキャラじゃないでしょ。いっつも眉間にシワよせてすぐ怒るから」 

お、俺ってそんな短気なのか?自分がどう見られてるのかまるでわからなかった。 
「そういうのはもぉがやれば似合うんですからぁ〜」 
「おま、おいやめろって」 

だんだんいつもの嗣永に戻ってきたぞ・・・ 
なんなんだこいつは、実は何も悩んでないのか・・・? 
「ねえせんせい、せんせいって・・・大切な人いる?」 
「いきなりなんだよ」 
「誰でもいいから、家族でも友達でも、恋人でも、誰か大切な人・・・」 

1 そりゃ生徒に決まってるじゃないか 
2 いないよ 
3 お前って言ったらどうする 



「いないよ」 

考えてみたが、本当に大事な人は思い浮かばなかった。 
そもそも大事ってどういう意味だろう、わからないよ。 
「本当にいないの?」 
「・・・いなくなったら困る人ならいるけどよ」 
「へえ・・・そうなんだぁ」 

嗣永はそう言うとまた黙ってしまった。なんだか重い空気・・・ 

これ以上話すのもちょっときついかな、と思ったらちょうど家の近くだった。 
「悪いな嗣永、送ってもらって。ここ俺んちだから」 
「ここが?へえ〜、なんかフツー。特徴らしい特徴無いね、せんせいと違って」 

アパートの階段を上がろうとしたら、腕をそっと触られた。 

「・・・待って、あのさぁ」 
「なんだよ、まだ何か用事があるのか」 
「・・・うち、あがってもいい?」 

ば、バカ! 
先生が生徒を自分の家に招くなんて許されるわけないだろ。 

1 悪いけど無理だ、気を付けて帰るんだぞ 
2 傘に入れてくれたお礼に茶くらいは出すか 
3 ・・・帰りたくないのか? 



いつものふざけた表情なら追い返せたかもしれない。 
・・・その顔は真剣に見えた。にこにこ笑っているあの顔じゃなかった。 

「・・・自分の家に帰りたくないのか?」 
「・・・・・・ん。早く帰ってもつまんないから」 
「そっか、でもあまり長くいるなよ」 
「わかってまぁ〜す」 

・・・はぁ、ついに生徒を家に入れてしまうのか。 
な、なんだか・・・やばい方に向かってないか・・・? 

いや落ち着け、ただ入れるだけだ。何かするわけじゃないんだ、うん。 


「わぁ〜〜、せっまーい」 
「お前喧嘩売ってんのか?ひとんちあがるなりそれかよ」 

昔から掃除はする方だったから片付いている。 
「せんせぇの家ってわりときれいなんだねぇ」 
「・・・まあな」 

すっかりくつろいでるな。男の部屋にあがってもうベッドに座るとは 
ああ、そういや男の兄弟がいるって言ってたっけ。こういう事は当たり前か。 

「ねえ、彼女いるの?」 
「前にいないって言ったじゃないか。もう忘れたのか?」 
「教えて♪いるんでしょ」 

1 だからいないって 
2 やっぱりいるんだ 
3 めんどいからお前にしとくわ 



「やっぱりいるんだ」 
「嘘だ〜、こないだと言ってること違うし」 
「い、いるって!ホラ待ち受け見てみろ」 
「これテレビで見たことある人だよ。せんせい嘘ヘタすぎ〜」 
いるわけないじゃないか・・・ 
前に付き合った人みんなに言われたけど、俺は気が短くてやだって。 
性格なんて簡単に直せないよ。難しいんだから 
「だませるとか思ったんだ。甘いっすねぇ〜〜〜」 
「それ以上なにか言うと傘なしで帰らせるぞ」 
「・・・雨、やまないね」 
嗣永は窓からどんよりとくもった空を見上げてつぶやいた。 
「ああ、こりゃ間違いなく明日も雨だぜ」 
立ち上がってお茶を入れようとしたら・・・ 

「・・・・・・つ、嗣永?!」 

お、おま、なんで、俺に抱きついてんだよ 

「せんせぇ・・・」 
「こ、こら、やめろ」 
「・・・・・・好き・・・」 

う、嘘だろ。 
教え子と・・・こんな、こと、したら・・・! 

1 どうしたらいい?わかんないよ 
2 だめだ。いい匂いだ、我慢できないっ 
3 や、やめろ、子供が大人をからかうんじゃない 



・・・強く抱きついている。 

一歩も動けない。そう思わせる程の強さだ。 

「もぉがせんせぇの大切な人になってあげる」 
「おま・・・え、やめろ、子供が大人をからかうんじゃない」 

ダメだよ嗣永、俺はお前の先生なんだ。 
越えちゃいけないんだ。お願いだから・・・この手を離してほしい。 

「・・・つまんない」 

そっと俺から手を離す嗣永。 
「まぁせんせぇは普段から面白いこと言わないし、こういう時も言えないのは仕方ないかなぁ」 

いつものあのぶりっこに戻った。ずいぶん切り替えが早いな。 
「もう雨もやんできたんじゃないか?時間ももうすぐ夜だぞ」 
「えぇ〜まだ六時前だしぃ」 
「・・・一緒にお前の家までいくよ」 


・・・俺の家からわりと近いんだな。それほど近くもないが 

団地、か。都内には最近少なくなってきたよな。 
「ありがと、ごめんつき合わせちゃって」 
「生徒を1人で帰すのは危ないからな」 
幸い雨は小降りになっていた。これならもう傘はいらないかもしれない。 
「じゃまた明日学校でな。遅刻すんなよ」 
走って帰ろうとしたら嗣永に呼び止められた。 
「せんせぇ〜!」 
大きな声だったから思わず振り向くと・・・ 

「今度はいつ家にいっていいの〜〜?!」 
「おまっ、ば、バカ!声がでかいよ!!」 
何を言いだすんだ嗣永、近くに誰かいてそれを聞かれたら大変だぞ! 
「あははははっ、なに焦ってんの。かわいい〜」 

お前の本当の¨顔¨はどれなんだよ・・・ 
いつも見せる笑顔なのか、それともさっき見せたあの真剣な顔なのか・・・ 

まだ俺を惑わせるつもりなのか