・・・財布が薄い。 
給料日まであと1週間を切ったが、このままじゃ所持金が尽きる日が先になりそうだ。 

めんどいからって食事をコンビニや外ですましてたからな〜、いつも気を付けようと思うんだけど・・・ 
学校は給食じゃ無いんだよな。まったく気が利かね〜んだから 

わずかとはいえこないだ調子に乗って嗣永に金やるんじゃなかったな。 
ああいうのはこうやって後に響くんだよ、いまさらもう遅いが。 

・・・久々に弁当でも作ってみようかな。 
確か自炊しようと決めて冷蔵庫に眠らせたままの食材があったはずだ。 

あったあった。 
・・・ちょっと古いけど、たぶん大丈夫だろう。 
これなら色々作れそうな気がする。さて 

1 豚のしょうが焼き弁当にするか 
2 野菜炒め弁当にしよう 
3 めんどいな、時間も無いし日の丸にするか 



よし。豚のしょうが焼き弁当に決めた。なあに簡単だよ、しょうが入れて焼けば出来上がりだから 

・・・包丁がうまく入らないな、こうか? 
わわっフライパンから煙が・・・我ながら手際の悪いこと。 

「で、できた!」 
こげなかったぞ。ちょっと味が薄いな、焼くのに精一杯で途中塩こしょうをふらなかったからか? 
でも匂いはちゃんとしたしょうが焼きだ、あとはキャベツやトマトをそえれば完成っと。 

「・・・別に料理はうまくなりたくはないな」 

わがままを言うなら毎日料理してくれる人が欲しいな・・・ 
はあ、欲しいな・・・ 

やばい遅刻だ!さっさと学校にいかねーと 


・・・昼休みのチャイムが鳴った。やっとか、ああ腹減った。 

いつもなら職員室に戻って昼飯だけどたまには教室で食べるか。 

他の学校はどうか知らないけどうちは先生でも昼休み中は教室で食事していい決まりだ。 

「おー、悪くないんじゃないか?」 

カバンから弁当箱を取出し開けてみたら、今朝より出来が良く見えた。 
意外と料理ってのは簡単なのかもしれないな。もう少し慣れたら難しいのにも挑戦してみるか。 

でも・・・やっぱり今朝も思ったけど、俺は料理の腕よりは恋人がほしい・・・ 

・・・ん?なんだ、誰かこっちにくるぞ。 

1 清水じゃないか 
2 どうした徳永、何か用事か 
3 ・・・飯の匂いにつられたか、嗣永 



おお、そのたれ目は 
「徳永じゃないか、どうしたんだ?」 
目の前にある弁当をまじまじと見つめている。 
「おいしそうだね先生、これ誰が作ったの?」 
「俺だよ、今朝作ってきた」 
「まじで?すごいね、先生って器用なんだ」 

俺を小馬鹿にしたりする生徒は多いが、有原やこの徳永は例外で普通に接してくる。 
まあ、先生というよりは友達という感じで接してくるのだが。 

「私のよりうまいじゃん。先生って料理できるんだね」 

徳永は手に弁当箱を持っている。これは自分で作ったのかな? 

1 お前のも見せてほしい 
2 良かったら少し食うか? 
3 そうだ、お前のと交換しようか 



「良かったら少し食うか?」 
「いいの?ありがと!」 

しょうが焼きを一切れ口に運びもむもむ動かしている徳永。 
なんだよ、そんな俺をじっと見ながら・・・ 

「・・・・・・」 
「どうだ?うまいか」 
「・・・味が、ない」 
「やっぱり?」 
「見た目は良かったんだけど肝心の中身がだめでした〜。先生まだまだ勉強不足だね」 

あーあ、せっかく最初の印象は良かったのに。ま、次はもっとうまくできるはずだ。 

1 徳永、今度はお前の食わせてくれ 
2 ホントに味がない?もっと食ってみてくれないか 
3 いっしょに食べないか 



「今度はお前の食わせてくれないか」 
「ええっ?あ、ああ、だめ・・・これ、失敗しちゃったから」 

徳永は持っていた弁当箱を後ろに隠してしまった。 
「え〜だめなのかよ。お前は俺の食ったじゃないか〜」 
「ゴメン先生、また今度にしてくれないかな?だめ?」 

顔では笑ってはいるが、いやみたいだな。弁当を見せるのが。 

1 嫌がってるしやめとくか 
2 俺よりうまくできてるはず。見せてほしい 
3 すきを見て奪う 



「徳永は結構器用だからうまくできてるよな」 
「ん〜〜〜だめ、そうやっておだてても・・・」 
「見せてほしいな」 

しばらく戸惑っていた様だが、徳永はまた弁当を前に出した。 
「誰にも言わないでね、約束だよ先生」 
「ああ、言わない」 

そっと開けたその中は 

・・・白 

と、赤い丸。これは日の丸ってやつか? 

「お前・・・」 
「ちがうの!今日は寝坊しそうだったんだもん、だからぁ」 
「いやえらいよ、自分で作ってるんだろ?」 
「あ、笑った!いま笑ったでしょ!も〜だからいやだったのにぃ〜!」 

1 俺のと交換しようか? 
2 我慢してそれ食べるんだな 



「俺のと交換しようか?」 
「いや悪いよ、それ先生のだしさ」 
「遠慮なんかするな。日の丸じゃいやだろ?」 
「・・・じゃあ遠慮しない。ありがと先生、その味がしないしょうが焼きいただきま〜す」 
「ひとことよけいだぞ。ほら」 

俺の弁当を受け取ってぺこっとお辞儀をする徳永。 
「ありがと先生!そうだ、今度なにかお礼するね」 
「いやいいよお礼なんて」 
「ホントにありがと〜先生!」 


・・・しかし、見れば見るほど見事な日の丸だな。 
この梅干しなかなかでかい、お、深い味わい。 

この米もなかなか、うまいな。いい素材だ。 

ちょっと食べてみたくなったな、徳永は普段どんな弁当作ってくるんだろう。 

今度、さりげなく聞いてみようかな・・・