「た〜〜〜まや〜〜!」 
「舞美うるさいんだよ、花火より声がでかいとかなんなの」 

今日はC館のお屋敷の庭で花火大会です。お嬢様だけでなく執事やメイド、コック、勢揃いで楽しんでいます。 
今更ながらこのお屋敷は本当に凄いですね、ここにいるだけで色々な行事を楽しめるのですから。 

「どいてどいて〜!も〜見えないよ〜!」 
千聖お嬢様が人をおしのけてはしゃいでいる。興奮なさっていますね。 
「愛理こっち!走るよ!」 
「ま、まって舞美ちゃん、まだそんなに走れない、って話聞いてよぉ〜」 

舞美お嬢様、そんなに愛理お嬢様をつれ回されては、ああ、お待ちください。 
…もう見えなくなってしまった。何もなければいいのだけど 

「っ?」 

なんだ?僕の足、誰か引っ張っているのか? 

「見つけた♪探したよひつじさん」 
「おや舞お嬢様」 
「いこっ、早く」 

僕をどこかに誘っていらっしゃるのだろうか? 

1 きっと花火がよく見える場所にいかれるのかも 
2 どちらまでですか? 
3 ああ、御手洗いならあちらですよ 



この人混みではなかなか花火が見えません。きっとよく見える場所まで… 
「そう、こっち来て、私についてきてね」 
「はい、舞お嬢様」 

しかしどこに居ても人、人、人に酔ってしまいそうで 
「どちらまで行かれるのですか舞お嬢様」 
「いいからついてきて。私がいいって言うまで」 

変だな。心なしかだんだんお屋敷から離れていく様な… 
「あの…いったいどちらまで行かれるのですか?」 
「いいから。黙ってついてきなさい」 

このまま行けば間違いなくお屋敷の門の外です。いったいどちらに行かれるおつもりですか 
「ひつじさん車運転できるでしょ?」 
「はい」 
「連れてって、花火大会」 

………え、花火大会? 

「いまC館の方で行われているじゃないですか」 
「ちがう。こっちの方っ」 
舞お嬢様はポケットから丸めた紙を取出し、僕に広げて見せてくれた。 
「こ、これは、○○川花火大会…?」 
「連れてって!」 

舞お嬢様、いきなりですね 

1 申し訳ありませんがお屋敷の外に出るのは… 
2 なだめてお屋敷に戻る 
3 …わかりました、参りましょう。ただし長くは無理ですよ 



「花火!花火!」 
う、有無を言わさず、ですね。僕をぐいぐい押して近くの車に乗せようと… 
「ま、舞お嬢様、夜8時以降はお屋敷の外に出てはいけないという決まりで」 
「花火!花火!」 
「…わかりました、参りましょう。しかしそれほど長くは無理ですよ」 
「わぁ〜〜い♪よーしいこう」 

○○川か。幸い車なら5分で着けそうだ。渋滞していなければいいけど 


「もう着いたね、ひつじさんはやぁーいっ、よしよし偉いよ」 
「ど、どうも…」 
僕の頭を撫でる舞お嬢様。 

「わぁ〜すごい人」 
「迷わない様に離れないでくださいね」 
「……ひつじさん、あの」 

ちょっと恥ずかしそうに僕を見上げる舞お嬢様。 

「手、つないで」 

1 はい、よろしいですよ 
2 ……恥ずかしいです 
3 肩車の方がよく見えるのではないですか 



「はい、よろしいですよ」 
僕が差し出した右手を両手でつかむ舞お嬢様。 
「もっとぎゅってしていい?ぎゅ〜〜〜〜って!」 
「い、痛いですよ」 

…僕の気のせいかな。お嬢様、いつもよりはしゃいでいらっしゃるような… 

「ひつじさんの手っておっきいね。私のより二回りくらいちがうよ」 

舞お嬢様の手、少し汗ばんでいますね。 
「わぁ〜〜すごいね〜」 
夏の夜空に咲き誇る光と音の花。まさしく夏の風物詩ですね。 

「お屋敷の花火よりおっきいよね!ほらほら見てっ、あんなにたっくさん咲いてる!」 

…なんと美しい。 
失礼ですが、舞お嬢様と同じくお屋敷の花火より綺麗だと思います。 
舞お嬢様の僕の手を握る力が自然と強くなっていく。 

1 僕も力を強くする 
2 お嬢様が肩車してとおっしゃった 
3 「違うとこいかない?」とお嬢様が 
4 車から音がする…?! 



「……場所、かえない?」 
「はい?」 

よく聞こえなかったのでしゃがんで耳を傾ける。 
「ここじゃなくて人が少ないところに行こう」 
「は、はい」 
と申されましても、見渡す限り人、人、人の海で… 
「あっ!ほらあそこ!」 
「ありましたね。人があまりいない場所」 

近くの公園の噴水。なぜかあまり人がいませんでした。 
「わぁあ〜〜〜〜」 
噴水の丸い台に座りまた空を彩る花火を見つめる舞お嬢様。 
…なんだか、新鮮です。近くにいるお嬢様は舞お嬢様だけだというこの状況… 

いつもお嬢様達のお側にいましたから、なんだかドキドキしてしまいます。 
しかもお屋敷の掟を破って舞お嬢様と二人で… 

……何を考えてるんだ。お言葉だけど舞お嬢様はまだ中学生になられたばかり 
そういう対象として見るだなんて、たかが使用人という身分で… 

「ひつじさん花火見てないでしょ」 
「えっ?!い、いえ、見てますよ!」 
「そお?なんかいまむずかしい顔してたけど」 

大きな瞳を向けられるとドキドキしてしまいます。 
瞳のなかにうつる花火、とても美しいです… 

1 花火が綺麗だなと思ったんですよ 
2 ……舞お嬢様、今宵はいつにも増してお綺麗ですね 
3 そういえばお嬢様はなぜこの花火大会に行きたいとおっしゃったのか 



……舞お嬢様は歳の割に大人びた方です。 
学校ではよくそのお声や顔立ちで実年歳より上に見られるとか 

…わかります。そう見えますから… 
「疲れちゃった…」 
「わぁっ!」 
その時、舞お嬢様が僕の肩にお顔を乗せた。 
「今日も千聖や早貴ちゃん、舞美ちゃんと遊んだから疲れちゃったな」 
「そ、そうですか」 

舞お嬢様…いい匂いです… 

「……ねえ、教えてあげようか。ここに来たいって言った理由……」 

1 是非教えてください 
2 …たまに外にお出かけしたくりますよね、そうでしょう? 
3 お時間です、車に戻りましょうか 



そういえば突然のお誘いでした。なぜなのかお聞きしたいです。 
「なぜ外の花火大会に行きたいとおっしゃったのですか?」 

うふふふ、と含み笑いをなさる舞お嬢様。 
「…外の花火が見たいから」 
予測していた答えが返ってきました 
「……っていうのは気持ちの半分、いやもうちょっと少ないかな?」 

あれ?違うのですか? 

「私ね、ひつじさんと二人になりたかったんだ」 
さらにお体を密着させてくる舞お嬢様。あの、それはどういう… 
「私のこと子供みたいに見てるから、ドキドキさせたかったんだもん」 
「そんなことはありません!舞お嬢様を軽く見る様な真似は」 
「…ホントに?」 
「………すみません、お嬢様のなかで一番年下だと思っていました」 

やっぱりね、という感じで笑う舞お嬢様。 
「そういうのキライだな。コドモ扱いされるのは」 
「も、申し訳ございません」 

さっきの大人びた表情にどきっとしたのも僕が普段から舞お嬢様を子供として見てたからか 

…僕はひどい奴だ 

「許さないもん、言うこときいてくれなきゃ」 

1 許していただけるならどんなことでも 
2 …ぷ、プロレス技をかけられるのかな 
3 とにかく謝る 



本当なら許してはいただけないはずですが、許していただけるならどんなことでもおききします。 

「私の言うこときく?」 
「はい!どんなことでも」 
「じゃあ………目を閉じて」 

…いったい何をされるのだろう。はっ、まさかいま座っている噴水の中に突き落とすとか。 

それとも道端の石で僕を殴るとか、いや舞お嬢様がそんな事をなさるはずが… 

怖い、早く目を開けたい、でもお嬢様の命令には逆らえません。 

¨………ちゅ…¨ 

…え?く、唇が柔らかい…ってこの感触は?! 
「だから開けちゃだめ!閉じたまま」 
一瞬だけ唇から暖かい感触が離れたあと、またすぐにそれが僕に触れた。 

……そう、これはおそらく舞お嬢様の… 

………っ?! 

ぼ、僕の唇の中に何かぬめぬめしたものが入ってくる!これはいったい 

ああ…わかった。これは舞お嬢様の… 

う、嘘でしょう、舞お嬢様がこんな刺激的な口付けをなさるだなんて。 
ああ…僕の舌にぬめりとしたものが絡み付いてきますぅ。 

「いいよ、目を開けて」 

目を開けるとそこには妖しく笑う舞お嬢様のお顔がありました。 
「いまのはいったい何ですか」 
「……私の初めてのキス。ちょっと頑張ったの」 

すいませんでした、貴女を子供として見ていたことを深くお詫びいたします。 
ま…まさか、舞お嬢様があの様なキスをご存知だったなんて。あ、頭の中がぐるぐる回っています 

いけない。身体の熱があがってきました。ああぁあああ 

「子供が初めてでこんなキスできないでしょ?もう私を子供扱いしないよね」 

1 ごめんなさい僕が悪かったです 
2 まともにしゃべれません… 
3 帰りますよ舞お嬢様、と動揺してるのをごまかす 



「ごめんなさい僕が悪かったです…」 
「うん、わかればよろしい」 

舞お嬢様…なんですかこの貫禄は。僕より一回りも年下のはずですのに… 
たった今あの様なキスをされたせいもあるでしょうが、もう貴女の命令に逆らえる気がしません。 

「やばっ、もうこんな時間!お屋敷の花火大会終わってるよ」 
「え………ああ〜〜〜〜っ!」 
いけない、もうすぐ時刻は夜の十時…!完全にまずいです!! 

「ひつじさん早く帰ろう!」 

大慌てで車に乗り、お屋敷へと急ぎましたが… 

やはり時すでに遅く門の前でお屋敷の人が勢揃いしていました。 
その中にはお嬢様達も… 

「どこ行ってたの!しかも勝手に抜け出して!」 


僕と舞お嬢様は夜が更けるまでお嬢様全員に怒られてしまいました。 

…ようやく自分の部屋に戻れたのは日付が変わる前でした。 

「ふう……」 

……眠れない。 

まだ、唇とその中が熱い様な気がする。 
目を閉じていたからよく見えなかったけど確かにあの感触は舞お嬢様の…… 

ああだめだだめだ、思い出すとますます目が冴えてしまう。 

…しかし思い出してしまう。舞お嬢様の芳しい香りが鼻の奥から消えてくれません。 
いったいどうやってあんな口付けの仕方を学んだのでしょう。 

もう…僕の心をかき回さないでください、僕はどうしたら 

¨…ひつじさん、起きてる?¨ 

ドアの向こうから聞こえたその声に心臓が飛び上がりそうになりました。 
せ、せめてノックはしてください! 

1 返事…できません。ごめんなさい舞お嬢様 
2 起きていますと答える 
3 部屋に入っていただこうかな 



¨ねえ、もう寝ちゃった?¨ 

お返事しないのも悪いなと思い、そっと声を出した。 
「…起きています」 

¨そう…あ、べ、別に用事は無いの、ただ来てみただけだから¨ 

僕と舞お嬢様を隔てた間にあるドアが今は厚く感じる。 
あんなことがあってすぐには普通には話せないよな… 
僕も舞お嬢様に何と声をおかけしたらいいのかわからない。 
もう、舞お嬢様は一番年下という対象では無い… 
うまく言い表わせないのが悔しいけど 

¨ね、ねえ、約束して¨ 
「なんでしょうかお嬢様」 
少し間をおいて 

¨また、ひつじさんと二人になりたい…¨ 

「はい、お嬢様のご命令とあらば」 

¨…ううん、お嬢様としての命令じゃなくて…その……¨ 


舞お嬢様 
遂に貴女が、僕と…… 

…その日はドアの向こうから舞お嬢様の気配がしなくなった後も眠れなかった。 

……だって……