・・・もう放課後か。早いもんだな。 
きれいな夕焼けだ。俺の教室は日当たりがいいからとてもよく見える。 

見とれてる場合じゃない。早く仕事を片付けなきゃな。こないだは嗣永のせいで・・・ 

職員室へ向かおうとしたらドアの前に誰かがいるのを見つけた。 

誰だ?忘れ物でも取りに来たんだろうか。 

俺が不思議に思っていると急にドアが開いた。そこに立っていたのは 

1 徳永じゃないか。どうしたんだ? 
2 その大きな背丈は熊井か 
3 岡井、どうしたそんなあわてて 
4 おお有原か 



「あっ、先生。まだいたんだ」 

俺を見つけてにこっと笑ったのは・・・有原か。 
めずらしいな、いつも誰かと一緒にいるのに今は一人とは。 
「どうした?なんか忘れ物でもしたのか」 
「うん。そう、本忘れちゃってさ・・・」 

自分の机の中を探り、本を取出しカバンに入れている。 
「気を付けてな」 
「先生どこか行くの?」 
「職員室。これからやらなきゃいけない事がいっぱいあるんだ」 
「大変だね。学校の先生って、私たちが帰っても仕事なんだ」 
「当たり前だろ。お前たち出来の悪い生徒の善導に身を粉にして働いてるんだ」 
「え〜〜、私って出来悪い?」 
「ふふっ。冗談だよ」 

・・・生徒に優劣をつけるつもりじゃないが有原は優秀だよ。 
成績だっていいし、何より対人の能力がすぐれてると思う。 
だいたい誰とでもうまく接する事ができてるし、うちに限らず有原に対していい印象を持ってる生徒は多い。 
「ねえ先生、お願いなんだけど・・・」 
「なんだ?」 
「先生の仕事見たいな。見てもいい?」 

1 仕事を?変わった奴だな。いいよ 
2 親御さんが心配するぞ。早く帰りなさい 
3 いいけど二人きりだぞ、変な事するなよとからかう 



いつまでかかるか分からないし、自分から申し出たとはいえそれに付き合わせるわけにはいかない 

「親御さんが心配するぞ。早く帰りなさい」 
「・・・うん、わかってるけど・・・」 
俺がそういうと急に有原の表情が曇ってしまった。 
「見たいな、先生の仕事。見てもいいでしょ〜?」 
まるで頼み込むみたいに俺に聞いてくる。 
・・・どうしたんだろう、まっすぐ家に帰りたくないのか。 
親のことに触れたら表情が変わったし、何かあったのかな? 

1 親と喧嘩してるのか? 
2 帰っても一人なのが寂しいのか? 
3 ・・・深く聞くのはやめる。たまには生徒に見せてやるのもいいか 



・・・深く聞くのはやめとくか。あまり嬉しそうじゃない。 
「いいよ。ついてきな」 
「ホント?ありがと先生!」 

曇った顔からまた人懐っこい笑顔になった。 
「他のやつには内緒だぞ。変な噂が立つからな」 
「立たないよ〜、先生なんか変な事考えてない?」 

職員室に着いて俺の机に座ると、有原は近くの丸椅子に座った。 
「ねえねえ最初は何するの?」 
期待を込めた様なまなざしを向けてくる。な、なんか照れるな・・・ 
どうしたんだ俺?こんな簡単に生徒を職員室に入れて二人きりにするなんて。 
たとえるのは悪いが嗣永ならまずこういう事はさせないよな。 

「そんな大した事はしないよ」 
「楽しみ〜」 

1 最初はテストの採点 
2 成績表をつける 
3 やっぱり帰った方がいいんじゃないか?送るよ 



最初はテストの採点からだ。嗣永に邪魔されて途中で止まってたんだ。 
「あっテストだ」 
「そ。見ててもいいけど細かくは見ちゃだめだぞ」 
「ねえ先生、私何点だった?教えてほしいな」 
「悪いがそれはできない。お前だけみんなより早く知るのはズルになっちゃうぞ」 
つん、と唇をとがらせる有原。 
「だめなの?先生。もう真面目なんだから」 
「ズルはだめだぞ」 
こういう事は公平に・・・特別扱いはしたくない。 

「は〜〜い。わかりました〜」 
不満そうだったが理解してくれたみたいだ。 
「先生早いね。そんな早く採点できるの?」 
「慣れだよ。先生になってまだあまり経ってないけど」 
「適当にやってない〜?先生ってわりといい加減だし」 

いい顔で笑うな、有原は。さっきも言ったが人当たりもいいし。 

「ねえ先生。先生は、どうして先生になろうって決めたの?」 
「またいきなりだな」 
「教えてほしい。ききたいな」 

1 子供の頃、憧れてた先生がいたから 
2 民間に行くよりはこっちがいいと思ったから 
3 当ててみてくれ。先生を目指した理由 



「当ててみてくれ。俺が先生になった理由」 
「ええっ。そんなのわかんないよぉ〜」 

普通に答えてもよかったが、ここは有原に当てさせてみよう。 
「ん〜〜〜、勉強が好きだから?」 
「好きだけど違うな」 
「え〜〜と、子供が好きだからでしょ?」 
「ある種の問題発言だな」 
「わかった。女の子の制服とか見れるからでしょ。カラダにも触れるし」 
「おい、俺は犯罪者予備軍じゃないぞ」 
「わかんないよぉ〜!ヒントちょうだい」 

意地悪するつもりじゃないが普通に答えるのもつまらないな。 
「じゃ宿題な。俺が先生になりたかった理由」 
「教えてくれないの?」 
「別にひっぱらなくてもいいんだけど答えてほしいんだ。有原に・・・」 
「だからヒントちょうだい」 
「そんな難しい理由じゃないよ。有原なら分かるはずだ」 

なぜか、そうしたくなった。 
普通に答えるより有原に答えて欲しくなった。 

「あっ、もうこんな時間!帰らなきゃ!」 

もうすぐ夜か・・・結局今日も仕事が残っちまったな。 
「送ろうか?一人しゃ危ないだろ」 
「大丈夫!ねぇ先生。宿題っていつまで?」 
「有原が決めていいよ。俺からは期限をつけない」 
「わかった。ちゃんと考えとくね」 

足早に職員室を出た有原。 
「先生、またお仕事見せてね。約束だよ!」 
「ああ。気を付けてな」 

・・・思い出した。先生になりたかった理由。 
日々の忙しさで忘れてたわけじゃないが、忘れかけていたかもしれない。 
それを思い出させてくれてありがとな有原。 

しかし不思議な雰囲気だな。話し掛けてみたくなる。 
いつも笑顔なのにどこか寂しそうに見えるんだ。 

・・・いけない、先生が生徒を特別扱いするのは。 

でも・・・