愛理お嬢様の車椅子を押してお散歩中です。 
「いい天気ぃ〜」 
「暑くはありませんか?お嬢様・・・」 
「ううん。まぶしいけど」 

お外に出ていらっしゃる時の愛理お嬢様は本当に嬉しそうだ。それだけに、足が不自由なのが悔やまれる。 
だが、きっといつか必ず治療する方法が見つかるはずだ。そうしたらお嬢様は・・・ 

早く拝見したいです。お元気に外を走り回る愛理お嬢様を 

「あっ、梨沙子ちゃんだ!」 

お嬢様が向こうの方を指差しておっしゃった。 
はて・・・その様なお名前は聞いたことがありません。果たしてどちら様でしょうか 
こちらに駆け寄ってくるその方を見てようやく思い出しました。 
「あ、使用人」 
この少々冷たいお言葉遣いのお嬢様。確か初めてB館に行き迷って森に入ってしまった時にお会いしましたね。 

あまり僕を歓迎してくれてはいない様子。さてなんとご挨拶いたしましょう 

1 改めて自己紹介。ちゃんとご本人からお名前をお聞きしたいです 
2 聞こえないふり 
3 それより、愛理お嬢様とどういう関係なのだ? 



改めてご挨拶いたしましょう。 

「初めまして、梨沙子お嬢様。僕は・・・・・・」 
僕の自己紹介を聞いても梨沙子お嬢様は何もおっしゃってはくれなかった。 
「梨沙子、どうしたの?執事さんが挨拶したんだからちゃんと挨拶して」 
「やだ。私は愛理と遊びに来たからこの人とはしゃべらない」 

・・・相変わらずですね。 

「せめてご氏名だけでもお願いいたします」 
「・・・菅谷、梨沙子」 

腕組みをなさり、横着そうにおっしゃる梨沙子お嬢様。 
・・・まさしく¨お嬢様¨といった感じの方ですね。 
C館にもB館にも変な意味でなくお嬢様らしい方はいらっしゃらないと思ってましたが・・・ 

「どいてよ」 
僕の車椅子を支える手を振り払い、そのまま押していく梨沙子お嬢様。 
「ちょ、ちょっと梨沙子お嬢様。どちらへ行かれるのですか」 
「あんたにはかんけーないね!愛理と遊ぶんだもん」 
僕に舌を出して・・・いったいなぜそう冷たいのですか。 

1 あんなに早く押しては愛理お嬢様が危ない 
2 ここはおまかせしよう。下手にお話ししてもうまくいかないだろう 
3 失礼ですが・・・お引き取りください、と車椅子を止める 



あんなに早く押しては愛理お嬢様が危ないではないですか。 
僕はお嬢様の危険を考えると、車椅子を早く押すことなどできません。止めなければ。 
「お待ちください梨沙子お嬢様!そんなに早く押されては愛理お嬢様が危ないです!」 

・・・僕の呼び掛けにまったくお答えする気配のない梨沙子お嬢様。 
それどころかさらにその押す早さをあげていって・・・ 
「梨沙子〜!はやーい♪風が冷たいよ〜」 
「愛理〜、きもちいい〜?」 
「すっごく・・・!」 

・・・僕が予測していたのとは裏腹に、愛理お嬢様は楽しそうだった。 
「もっと早くしてもいいよ!」 
「ええっ、無理、かなり早く走ってるんだよ」 
「梨沙子ならできるでしょ」 

ここからお顔はあまり良く見えないけれど 
あのはしゃぐお声からすると、きっととてもいい笑顔なんだろうな。 

おそらくはまだ僕が見たことのないほどの・・・ 
なんだか、急に寂しくなってしまった。僕はただの執事、梨沙子お嬢様は愛理お嬢様の・・・ 

そういえばまだ詳しくお二人の関係をお聞きしていなかったな。 

1 聞いてみる 
2 お二人が遊んでいるのをしばらく眺めていよう 
3 ・・・あっ、転びそう。いけないあっちはカッパの池! 



「石ころよけながら走るよ!」 
「わっ、きゃ、もっとゆっくり曲がって」 
「やだ〜。早いのがいいんでしょ?」 
内心ちょっとどきどきしていたが、お二人の事を見守ることにした。 
たまにはああやって思い切り楽しむのも愛理お嬢様のためになるだろう。 

「ちょ、ちょっと休む」 
「大丈夫?汗かいてるよ梨沙子。はしゃぎすぎだよ」 
「愛理だってきゃーきゃーさわいでたじゃん」 

梨沙子お嬢様、冷たい方だと思ってたけど明るくて活発な方ではないですか。 
・・・ツンとしてるのは僕にたいしてだけかな? 

1 愛理お嬢様とお話しよう 
2 梨沙子お嬢様とお話してみようかな 



お話してみようかな。 
「あの、梨沙子お嬢様・・・」 

僕が近寄るなり、寝転がっていた体を起こしてその場から後退りを始めるお嬢様・・・ 
「どちらに行かれるのですか。お嬢様」 
「こないで。愛理としか話したくない」 
「梨沙子〜、どうして執事さんに冷たいの?ちゃんと話してあげなよ」 
「やだ。この人苦手。なんかやだ、雰囲気がダメ」 

は、ははは・・・なんとはっきりとした方でしょうか。 
なんだか愛理お嬢様とは対照的な方ですね。 
「・・・!」 
僕から後退りをなさっていたがしばらくすると急に顔つきが変わった梨沙子お嬢様。 
「今すぐその場から離れて、使用人さん」 
「はい?」 
「早く離れた方がいいよ。言うこと聞くか聞かないかは自分次第だけど・・・」 

梨沙子お嬢様の表情は、真面目に忠告なさっている様にも 
逆に僕を欺こうとなさっている様にも見えます・・・ 

1 素直に従いその場を離れる 
2 信じずにとどまる 
3 わけを詳しく聞いてみる 



僕は僕の直感を信じます。ここは・・・ 

梨沙子お嬢様の言葉を信じることにします! 
なにやらただならぬ表情でした、きっと僕の身に危機が迫っているのかも・・・ 

¨チッ¨ 

・・・な、なんだ?いま何か僕の耳をかすったぞ。 

¨ガゴッ¨ 

そして、足元になにやら塊が突き刺さって・・・煙が!これはいったい 
「熱いっ!これは・・・ボール・・・?」 
拾い上げたものは野球に使う球。いったいどこから降ってきたんだ。 

「・・・ね?危なかったでしょ、使用人さん」 
僕を見上げて、 
果たして何とお思いなのか読み取りにくい複雑な笑顔を向ける梨沙子お嬢様。 

「意外と素直なんだね。人間は素直なのが一番だよ」 

いったいどのお口がその様なお言葉を・・・ 

いえ、言うのはやめましょう。 

まだ心臓がどきどきしてる・・・僕の耳には球がかすったあの音がずっと鳴ってる気がする。 
「泣いてるの使用人さん」 
「はっ?!い、いえ、泣いてなんかいません!」 
「いい年してるのに泣いてんの?ねえ泣いてんの?」 
「やめなよ梨沙子。執事さん、怖かったんだから」 

うう情けない、愛理お嬢様にお気遣いをさせてしまうとは。 

「じゃあね愛理、また遊ぼう」 
「うん、ばいばい梨沙子」 

最後に、また僕の方に駆け寄ってくる梨沙子お嬢様。また何か・・・ 
「・・・耳貸して」 
有無を言わさず僕をしゃがませて。 
「勘違いしないで。球が飛んでくるのが見えたから、教えてあげただけなんだから」 
「はあ・・・」 
「別にあんたみたいな使用人なんか心配じゃないから!じゃあねっ!」 

・・・行ってしまった。今のはいったい・・・ 
ところで、あの球を投げたのは誰なんだろう? 
「あっ、ここにあった!執事さん、この辺りに球が飛んでこなかった?」 

ま、舞美お嬢様・・・投げたのは貴女だったのですか?!なんという剛肩ですか・・・