なんだか胸が重い。 
僕はもうえりかお嬢様とひとつの線を越えてしまった。 
さらに早貴お嬢様とも・・・間違って部屋に入ったとは未だに言えない。 

はぁ・・・苦しいよ。 
自分で撒いてしまったのだからそんな事を言える資格なんてあるはずないけど・・・ 

「重いでしょ?執事さん。一緒に持ってあげるんだよ」 
「え、えりかお嬢様!いえこれは僕1人で」 
「いいから。ふ・た・り・で・持ちたいの」 

僕をからかう様な、はたまた誘惑してる様な妖しげな目線を送ってくるえりかお嬢様。 
前にも増して積極的になられた様な気がします。 

早貴お嬢様は・・・ 
「お、おはようございます執事さん・・・」 

なんだか以前よりよそよそしいというか、えりかお嬢様とは対照的に更に控え目になられた気がします。 

い、いけません・・・僕は・・・僕は・・・ 

1 気分を晴らすためにお屋敷の外へいこう 
2 今は執事の仕事に集中するんだ 
3 いけない、また自慰をしなきゃ平静を保てない 



このままでは胸が押し潰されてしまいそうです。 
・・・気分を晴らすためにお屋敷の外へいくとしましょう。 

「気持ちいい」 

梅雨の季節なのに珍しく晴れて少し暑いくらいだ。 
お屋敷で働く人たちも衣替えをしてもう少しで1ヶ月ほどになるのか。 
夏にはまだ早いけどもうすぐだな・・・ 

「・・・おや?」 

ふと、小高い丘にある木を見てみると、その木陰に何やら人影を発見した。 
あれは誰だろう 

1 近づいてみましょう 
2 河童がいるという池に行ってみる 
3 ・・・あれ?あの人、いきなり倒れたぞ! 



近づいてみましょう。どなたがいらっしゃるのか気になります。 

・・・近づいていくに従いだんだんとお顔がわかる様になって、 
「あっ」 
いけない。あの方は・・・栞菜お嬢様ではないですか。 
普段から僕と殆ど口をきいてくれず、朝のご挨拶も最近ではやらなくていいと・・・ 
「誰?」 
はっ、いけない。こちらに気付いてしまわれたか。 

「・・・!」 
僕を見るなり座っていたお嬢様が立ち上がろうとした。 
「ま、待ってください。僕は・・・」 
「な、何?私がここにいるって誰に聞いたの」 
「ぐ、偶然ですよ。偶然とおりががっただけです」 
「・・・ホントに?」 

栞菜お嬢様は僕を嫌う、というより・・・ 
苦手、という様な空気がこちらに伝わってくるんです。 

・・・ん、いまお嬢様の近くになにか 
「よ、用事がないならあっち行ってよ」 

蜂だ・・・!お嬢様は気が付いていない様子。 
うわっ、何匹もいるぞ。一匹や二匹どころではない。大変だ 

1 蜂を追い払う 
2 お嬢様の言うことに従うのが執事の役目・・・立ち去ろう 
3 蜂がいることをお嬢様にお伝えしよう 



どうやれば蜂を追い払えるのかは分からなかった。 
だけど、栞菜お嬢様に危険が迫っているこの時で考えている暇などない。 
「来ないで!やだ・・・」 
僕は、栞菜お嬢様の近くを飛び回る蜂の群れにむかっていった。 
「こいつ、栞菜お嬢様から離れろ!」 
「・・・え・・・」 
一心不乱に腕を振り回し蜂を追い払おうとしている僕の姿を、ただ呆然と眺めているお嬢様。 

「うわあああ、来るな、こいつ!」 

僕の威嚇に対して興奮した蜂の群れが一斉に襲い掛かってきた。 
「痛いっ!」 
衣替えはもうすでに終わっていたので、露出した腕に刺さる針が痛い。 
「は、離れろって言ってるじゃないか」 

数分後、ようやく蜂がその場から飛び去っていった。 
いててて・・・いったい何ヵ所刺されたんだろう。 

「ねえ・・・」 
木の陰から栞菜お嬢様がこちらを見つめている。 
「だ・・・大丈夫?」 

1 平気ですよ、と言う 
2 僕はいいです、それよりお怪我はありませんか? 
3 平気、と言いたいけどなんか腕がしびれてきたみたい 



そんなに怯えたお顔を見せられるとこちらもつらいですよ。 
「へ、平気ですよ。ほら・・・!」 
しっかりと動かしてお嬢様に安心していただこうと思ったら、一瞬だけその刺された右手が動かなくなった。 
「あ・・・」 
「平気ですよお嬢様。動くでしょう?」 
それをごまかそうとすぐに動かしたが、栞菜お嬢様には伝わってしまった様だ。 
「ごめん、私が木の下なんかにいたから」 
「お嬢様のせいじゃありませんよ!」 
「待ってて、いま薬取ってくるから」 

おとめしようと言葉をかけたが栞菜お嬢様はお屋敷へと行ってしまった。 
ああ、なんたることだ。執事が自分での失態でお嬢様の手を患わせるなど・・・ 
ここはおとなしく待っていた方がいいかもしれない。 

・・・木の下は涼しいんだな。久々にこういう場所で休んだ気がする。 
何気なくその辺を見ていると、遠くにまた人影を見つけた。 
栞菜お嬢様ずいぶん速いなと思ったがあれは車椅子・・・愛理お嬢様か。 
・・・立ち上がろうとなさっている。いけない、またもしもの事があったら 
し、しかしいま栞菜お嬢様に待っててと・・・僕はどうしたらいいんだ?! 

1 愛理お嬢様が危ない。いますぐに参ります 
2 栞菜お嬢様の言うとおりにする 



愛理お嬢様はこのあいだも倒れたばかり。もしものことがあっては大変だ。 
「愛理お嬢様ぁあ〜〜〜!!」 
僕の呼び掛けに振り向く愛理お嬢様。 
ああっいけない、足が震えている。あのままでは・・・! 

「お嬢様!!」 

その細いお身体をなんとか支えた。よかった・・・間に合ったか・・・ 
「し、執事さん、どうしてここに?」 
「偶然通りがかったものですから。それよりお怪我はありませんか?」 
「・・・大丈夫だから」 

僕の手をどかそうとしている愛理お嬢様。 
「あ、あのっ」 
「平気だよ執事さん。私だって1人で歩けるんだから」 

いつもの穏やかな口調より多少苛立ちの様な感情が込もっている気がしました。 
「向こう行ってて、平気、うん。私は平気だから」 

立ったまま歩こうとしない僕に対して、また苛立ちのこもったお声を・・・ 
「1人にしてよ執事さん」 

1 どうかなさったのですか・・・? 
2 気遣いながら立ち去る 
3 黙って立ち去る 



「愛理お嬢様・・・あのう・・・」 
「・・・執事さん」 
「どうかなさったのですか・・・?」 
「・・・なんでもない・・・」 

それ以上はお聞きできなかった。こちらを振り向いてくれずに、車椅子を押しているそのお姿を見ていると・・・ 

「・・・痛っ」 
どこが痛むんだ?ああ、そうか、右腕か。 

思い出したみたいに再び痛みだした。愛理お嬢様を支えた時は痛くなかったのに・・・ 

・・・そうだ。栞菜お嬢様はどこだ? 
確か薬を取りにお屋敷に行かれたはずだったな。 

まだそれほど時間は経っていないはずた。 

1 先ほどの場所で待とう 
2 お屋敷に戻る 
3 また危険な目にあっているお嬢様はいないかな?心配だ 



栞菜お嬢様のもとに戻ろう。 

「えーと・・・薬が置いてあるのは確か・・・」 
医務室にあったはずだよな。よし、いこう 
お屋敷には普通の部屋だけでなく食堂は医務室などがある。 
医務室、といってもそんなに大それた部屋ではない。包帯や絆創膏、風邪薬などがまとめて置いてあるからそう呼ばれている。 
休むためのベッドも数台備え付けてある部屋だ。 

元気なお嬢様方はよくこのお部屋をご利用になり、特に舞お嬢様や千聖お嬢様は一週間に一度はここにいらっしゃる気がします。 

・・・栞菜お嬢様、いました。 

棚をお探しになられていますね。なかなか薬が見つからないのでしょうか。 
「早く見つけなきゃ・・・」 

1 普通に声をおかけする 
2 ちょっと驚かせてみましょうか 
3 あ、くしゃみが出そう 



「お嬢様、ここにいらしたのですね」 

びくっ、とその肩が跳ねる栞菜お嬢様。 
「しし執事さん?!びっくりしたなぁもうっ」 
「ごめんなさい。驚かせてしまいましたか」 
「だって音もしなかったからまさかいるなんて思わなかった」 

お嬢様は棚から蜂に刺された時の薬を取り出した。 
「う、腕出して、ぬ、塗ってあげるから」 
「・・・よろしいのですか?」 

僕の体に触れても大丈夫なのだろうか、栞菜お嬢様。 
「は、は、早くして!」 
「はい」 

そのお顔を真っ赤にさせて、おそるおそる僕の右腕に・・・ 
うわぁ、なぜか僕も緊張してきたんですが・・・ 
「ついた?」 
「いえ、ずれています」 
「じゃ、じゃこっちだね」 
まるで、犬が嫌いな人が犬に触れるかの様な触り方ですね。 

時間はかかったが無事に刺された場所に薬がついた。 
「すみませんお嬢様、お手を患わせてしまいまして」 
「い、いいの・・・ちゃんとお返ししたから」 

お返し・・・? 

「私が膝擦り剥いたときに絆創膏貼ってくれたでしょ。だからお返し」 

・・・あのときは驚きました。今日のように偶然お会いしましたよね。 

「おかげでほら、もう治ったから。だから執事さんにもお返し」 
「ありがとうございます」 

早口気味でおっしゃると、栞菜お嬢様は足早に立ち去ってしまった。 
「お、お、お大事に!じゃあねっ」 
「・・・はい」 


良かった。 
この前よりも長く栞菜お嬢様とお話ができました。 
まだあまり僕の目を見てはくださらないけれど、そう簡単にはいかないよね。 

苦手なものは自分の思う通りにはいきませんから・・・