…もう梅雨入りしたのか。今年は例年よりかなり早めらしい こう毎日のように雨だと洗濯物がなかなか干せず、乾燥機が活躍する。 「綺麗な紫陽花だなぁ」 お屋敷のまわりには青や紫の紫陽花が咲き誇っていた。 「美味しそうだね千聖!」 「それは食べられないから舞ちゃん」 この雨だというのに舞お嬢様と千聖お嬢様は雨合羽を羽織りお外を走り回ってます。 お揃いの赤い雨合羽、後ろ姿は見分けがつきません。 「……おや?」 ふと、違う色の雨合羽がお屋敷から出ていくのが見えた。 雨の時は視界が少々悪くなるけど見分けがつきやすい黄色い雨合羽。 いったいどなたでしょう。気になります 1 追い掛けてみましょう 2 あっ転んだ!大変だ 3 それより千聖お嬢様と舞お嬢様のお世話をしなければ 何やら急いでいるらしくかなりの早足。いけません、足場が濡れていて滑りやすく危険です あっ、転んでしまった。大変です! 「大丈夫ですか?」 その黄色い雨合羽を着た方に駆け寄り手を差し伸べると 「……執事さん」 「早貴お嬢様!お、お怪我はありませんか?」 「うん。ちょっとびっくりしちゃったけど」 そうおっしゃって独特の笑い声を出す早貴お嬢様。 この笑い声を聞くとなぜが顔がにやけてしまうのです。いったいなぜでしょうか 「そんなに急いでどちらに向かわれるのですか」 「友達のところだよ。雨の日は必ず一緒に遊ぶんだ」 1 僕もご一緒してよろしいでしょうか? 2 どなたが友人なのかお尋ねしてみましょう 3 …お嬢様、膝を擦り剥いてますよ 「僕もご一緒してよろしいでしょうか?」 ついさっき転んだばかりだ。早貴お嬢様一人では危ない。 「いいよ。執事さんも一緒に来て!」 あっ、あっ、もう早貴お嬢様、そんなに走ると危ないですよ。 「早く〜。もたもたしてると置いてっちゃうよ」 雨に濡れた草をぱちゃぱちゃ音を立てながらはしゃいでいる早貴お嬢様。 普段から割りとお部屋の中で読書をなさっていたので、こうやってお外で遊ばれるのがお好きだとは知りませんでした。 それにしてもどちらに向かっているのだろう? だんだんC館の方から離れていく気がするのですが。 「お嬢様、いったいどちらの方まで行かれるのですか」 「ここで待ち合わせだよ。あっほら、いた」 早貴お嬢様が指差す先には 1 …熊が雨宿りしている。ってあの熊は! 2 か、カエル?やけに大きいですね 3 ふくろうが木の下で雨宿りしている …か、カエル?やけに大きいぞ。しかも体が黄色いなんて。 「ケロ」 「元気だった?ぬけさく」 「お嬢様そのぬけさくというのは何ですか」 「この子の名前だよ。ね、ぬけさく」 「ケロッ」 はあ、このカエルはぬけさく君というのですか。 黄色いカエルといえば確か昔のマンガにいた様な気がします。えーと名前は 「ケロ〜〜ン」 「わぁあっ?!」 いきなりぬけさく君が飛びかかってきた、と思ったら。 なんと僕の頭の上に乗ってきたのです。すごいジャンプ力ですね 「ケロケロケロケロ」 「ぬけさく、執事さんが気に入ったって」 「はぁ、ありがとうございます…」 この前森に迷い込んだ時に会った熊といい、僕は動物に好かれる体質なのか。 …いま早貴お嬢様はぬけさく君の言葉がお分りになった様子。いったいこれは 「あっ来た!もうおそいよ〜」 1 友理奈お嬢様! 2 熊ちゃん… 「ごめん早貴ちゃ〜ん。えへへぇ」 大きな葉っぱを傘にしてこちらに歩いてくる友理奈お嬢様。 確か昔、テレビでこんな光景を見たことがある気がします。 「またみんなとお話してたんでしょ」 「ごめぇん。つい話しすぎちゃって」 相変わらず独特の雰囲気をお持ちです。やわらかいというか少々不思議な空気を醸し出して… 「あ、執事さん。こんにちはぁ〜」 「こんにちは友理奈お嬢様」 「なかさきちゃんが頭に乗ってる。気に入られたんだねぇ」 「友理奈ちゃん。なかさきじゃなくてぬけさく。わかる?前から言ってるよね」 「私だって前から言ってるもん。なかさきちゃんの方がかわいいよぉ。ね、執事さん」 「ぬけさくの方が可愛いってば。ねぇ執事さん」 うぅ、そんな事を聞かれましても… どちらもよくお似合いのお名前だと思いますが。 「ケロケロ」 このカエルずっと僕の頭に乗ってますね。 1 早貴お嬢様命名のぬけさく君です 2 友理奈お嬢様命名のなかさきちゃんです 3 本人に聞いてみるのがいちばんでは? 「ご本人にお聞きしてみるのがいちばんではないでしょうか」 「そっかぁ。じゃあ聞いてみるね」 友理奈お嬢様が僕の頭からカエルを下ろし、しゃがみこんで聞いている。 そのしゃがむ仕草もなんだか可愛らしいですね。 「なかさきがいい?」 「ケロ……」 「じゃ、ぬけさくがいい?」 「ケロ♪」 僕には反応の違いがよく分からないけど友理奈お嬢様はお分かりの様子。 あまりうれしそうではないのでどうやらカエルは早貴お嬢様命名のぬけさくを選んだ様です。 「だからぬけさくだって言ってるでしょ。ね、ぬけさく」 「ケロ〜ン」 今度は早貴お嬢様の頭に乗るカエル君。人懐っこいですね。 「う〜、やだ。私はなかさきちゃんって呼ぶもん」 「友理奈ちゃん子供みたいだね。まったく」 「うるさ〜い!」 ちょっとかわいそうですね、友理奈お嬢様。 ご自分が命名された名前なら愛着があって当然ですから。 「まあまあお二人とも。どちらも素敵なお名前ですよ」 「ありがと執事さん。ねぇ友理奈ちゃん何して遊ぶ?」 「ついてきて。きれいなもの見せてあげる」 「そろそろ雨が止みそうだからあれが見れるよ」 「ねえ友理奈ちゃん何が見えるの?」 僕と早貴お嬢様に満面の笑顔を向けて、何もおっしゃらない友理奈お嬢様。 期待してて、ということでしょうか 「ここ森じゃん。友理奈ちゃんてここ好きだよね」 いつしか僕達はB館の敷地にあるあの森に来ていました。 どうやら早貴お嬢様も何度かここにいらした事があるみたいです 「迷わないように気をつけてねぇ」 森の中を奥深く進んでいく。 雨で足場がぬかるんでいる上にやたらと背丈のある植物ばかりで進みにくい。 しかし友理奈お嬢様は慣れた足取りでどんどん進んでいきます 「ここだよ」 「うわっ?!」 急に眩しい光が差し込んできたかと思ったら、 目の前の空にかかる七色の橋……いえ、これは 「虹だぁ!うわああきれーい」 その瞳をさらにきらきらと輝かせる早貴お嬢様。 虹のまわりにはさっきと同じ森がありますが、その虹の部分だけは草原が広がるのみ。 いつの間にかすっかり雨はあがっていたみたいです。 「ね。きれいでしょ」 1 友理奈お嬢様、いったいどうやって見つけたのですか? 2 綺麗ですね 3 今度は三人でお弁当を持ってここに来ましょう こんなに美しくはっきりとうつった虹を見たのは初めてだ。なんだか手を伸ばせば触れられる様な…… 「友理奈お嬢様、いったいこの虹をどうやって見つけられたのですか」 「お友達が教えてくれたんだよぉ。ここにきれいな虹があるって!」 「なんかここってあったかいね。ふぁあああ…眠くなっちゃったよぉ」 「うう…ん、なんか私も早貴ちゃん見てたら眠くなっちゃった」 不思議なことにここの草むらはあれほどの雨にもかかわらずほぼ濡れていません。 しかしこのまま寝るのも少々よろしくはないですよね… 1 シートを持ってくる 2 名残惜しいですが帰りましょうか。さすがに寝るのは… 3 お二人とも僕の膝枕でよければ お屋敷にもどりシートを取ってくることにしました。 それなら草むらに寝転がるよりは汚くないはずです。 「お二人とも待っていてください。ただちにシートを持って参ります」 「いいよぉ。ふぁああ…」 「このまま寝るから…」 ちょ、ちょっとお嬢様!ああだめです、草むらに直接寝転がるなど。 「おやすみなさい」「おやすみなさい」 止めようとしたけれどもう友理奈お嬢様と早貴お嬢様は夢の中でした… 仲良く寄り添って眠るそのお姿がなんだか微笑ましいですよ 「友理奈ちゃん……すぅ…」 「早貴ちゃん……すぅ…」 そのお姿はまるで… 仲睦まじい姉妹のようです